
【特別編・後半】
一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2)
今回も、前回に引き続き「就職活動が思うようにすすめられていない人」が、ここで今一度考えてみるべきことについて触れていきたい。今回取り上げる3つの切り口は、前回の①②に比べて、より細かい部分になってくるが、ひとつずつ順番に見ていこう。
③ 「自己理解(自己分析)」のポイントを外していなかったか?
今回取り上げる3つの切り口の中でも、まず、この「自己理解(自己分析)」については、就職活動が思うように進められていない人は、特にしっかりと振り返り、見直しをしていくべきポイントであろう。
「就活のKEY」の各コーナーでも繰り返し伝えていることであるが、人材として採用するにあたっては、採用する側にとっても『知りたいこと』があるからこそ、応募書類を提出させたり、面接をするのである。だから「自分なりに」十分に自己分析を行い、自己理解が出来ていると思ってアピールをしたつもりでも、もしそれが「採用側が知りたいポイント」から外れてしまっていたとしたら、結局、そのアピールはアピールとしての機能を果たしていない…もう少し厳しい言葉で言えば「意味を成していない」ということになってしまうのである。
採用側が知りたいポイントを押さえているかどうか、もし、ポイントを外してしまっていると考えられる場合に、それをどのように改善していくのか…については、自分だけで解決しようと思ってもなかなか難しいだろう…というよりも、そもそも、自分だけで何とかしようと思っていた結果、就職活動に行き詰まってしまったという人も多いのではないのだろうか?
そのような人は、ぜひ、大学の就職支援部門のスタッフや専門のカウンセラーなど、いわゆる「第三者」からに積極的に相談し、その相談から得られたアドバイスを活かしていくという姿勢を持っていただきたい。特に、今まで「何となく相談しにくい」「相談に行くのが面倒くさい」「厳しいことを言われるのが辛い」…などといった理由で、相談・アドバイスを活用してこなかった人は、その考え方を改めて、とにかく、まずは一度足を運んでみることから始めてみよう。
ちなみに、相談をしたりアドバイスをもらう「第三者」については、できるだけ「あなたにとって『身近な人』(親兄弟・親戚など)」ではなく、より「あなたにとって『身近ではない』人」の方が良いだろう。(縁故採用などであれば別だが、基本的には)採用選考の場で、あなたのアピールを評価する採用担当者というのは「あなたのことを知らない人」たちである。そのような「あなたのことを知らない状態」であなたのアピールを見た・聞いた時に、その内容が理解できるものなか・印象に残るものなのか…などをを評価してもらうには、やはりアドバイスの段階から、あなたのことをよく知らない人がどう感じたのかを知る方がより効果的である。
自己アピールの内容が「それを見聞きする採用担当者にとって『知りたい内容をきちんと押さえた』ものなのか」をどこまでしっかりと見直し、より効果的な内容に改善をさせていけるかどうかが、これからの就職活動が有意義なものに変えていけるかどうかの大きなカギの一つになるだろう。人によっては、その見直しに相当な時間が必要になる場合もあるだろうし、自分なりに頑張ってまとめた自己アピールの内容に、いわゆる「ダメ出し」をされるのは辛いかもしれないが、そこを乗り越えていくことができたときには、それが「自分自身に対する『自信』」につながってくることも多い(…もっとも、その瞬間にはなかなか自覚できず「後になって振り返ってみれば…」というケースも多いかとは思うが)。ぜひ、就職活動が「自分自身に対する自信をつけるためのチャンス」だと思って、今一度「真正面から」自分自身に向き合ってみていただきたい。
④ 筆記試験対策をおろそかにしてこなかったか?
筆記試験対策については、筆者自身も就職支援に関するアドバイスを行う立場として、機会があるごとに、筆記試験対策は「いわゆる『特効薬』というべき方法はない」「日々の積み重ねが大切」ということを伝えているが、おそらくこれは、筆者に限らず、就職支援に携わっている人であれば、おおむね同様のアドバイスをしているのではないだろうか。
採用選考における筆記試験は、どうしても「足切り」というイメージが強いだろうし、実際にそれが目的の一つになっている会社が多いのは事実なのだが、そうは言っても、わざわざ手間や費用をかけてまで、応募者の基礎能力を確認するということは、その目的が単に足切りのため「だけ」ではないかと思われる。その(足切り以外の)目的については、それぞれ会社によって考え方はあるのだろうが、おそらく、多くの会社で目的の一つにしているのではないかと思われるのは「当社で(新人として)仕事をこなしていくために『最低限持っていてほしい』能力や知識が身についているかどうか確認する」ということである。
よく「採用は人物重視」という言葉が聞かれるが、いくら人物重視と言っても「会社として(新入社員なりに)求める仕事(内容・量)をきちんとこなした対価」として給与を支給している以上は、雇用する側も「とってもいい人だけど、理解力や知識量が非常に乏しくて、1から10まですべてを手取り足取り教えないとまともに仕事がこなせないような人」は、さすがに雇用することはできないだろう。
つまり「採用は【会社として求める最低限の基礎力や知識を持っていることを確認できた人の中から】人物重視で行う」…これが多くの会社の考え方だろう。そして、ぜひ、ここで意識をしておいていただきたいのは、この【 】の部分であり、この部分を、わざわざ丁寧に「言葉では説明したりはしない」という会社も多いということである。それは、特に大学生の新卒採用の場合であれば、少なくとも大学を「卒業見込」になっているという時点で「大学でそれなりにきちんと学んできたのだから、それ相当の教養は持っているはずだ…だから、そんなことをわざわざ説明する必要もない」と認識している採用担当者が多いからだろう。
また、厳しい言い方にはなってしまうが、例えば、ある会社の求人票を見て、「大学卒」の初任給が「高校卒」や「専門学校卒」よりも高水準であったとしたら、それは、単に応募者の年齢が高いからなのではなく、それ相応(少なくとも大学で学んだ分だけ)の知識や教養(あるいは、学生生活での経験から学んだこと)の「上積み」があるからこそ、それに見合った給与水準を設定しているのであって、もし、その上積みが無かったとしたら、わざわざ高い給与を出してまで大学卒を採用する意味は無い…ということなのである。
それだけに「企業の大小問わず、とにかく筆記試験が全く通らない…」という人は、特に、知識・教養や物事への理解力の部分で「採用する側の求めるレベルには至ってない」と言われているようなものであり、このまま何も手を打たなければ、状況は何も変わらない可能性が高い。そして、筆記試験対策については、残念ながら「そんな困っているあなたに、わずかな努力で何十時間分勉強したのと同じ効果が出せる『●●』という方法があります!」…といった都合の良い話(先程申し上げた、いわゆる「特効薬」的な方法)は無いのである。(仮にそんなものがあれば応募者の誰もが、そもそも筆記試験で悩むことは無いだろう…)
結局のところ、筆記試験対策については「取り組まなければ!」と思った瞬間から「できることを一つずつこなしていく」以外に方法はない。ただし「苦手な分野をつぶしていくことで大きく伸ばす」「得意分野で確実に得点できるようにそこに絞って力をつける」「志望する業界の傾向に合わせて対策をする分野を絞る」…など、取り組みの「効率を上げていく」ための工夫はいろいろとできると思われるので、自分自身の現状と特徴をきちんと把握した上で、より、自分にとって必要なことに取り組んでいこう。
また、少し話は変わるが、最近では、筆記試験対策そのものを避けるため「筆記試験を行わない企業に応募する」という、いわゆる「最初から『ハードル』を避けてしまう人」が新卒でも増えているようである。勿論、それも「考え方のひとつ」であり、考え方は人それぞれ自由なので、本人がそれで良いのならば、それ以上、云々するのは余計なお世話…なのだろうが、それでも敢えて申し上げれば「採用選考で(入社時に)知識や教養のレベルを問われないなら、社会人になっても、別に知識や教養など無くてもやっていけるだろう…」などと考えていたら、おそらく、実際に社会人になってから苦労をすることになるだろう。
例えば、会社の仲間でもよいし、取引先やお客さんでもよいのだが、誰かと仕事に関する会話をするという場面があったとする。もし、そのような場面で、身につけておくべき知識が全く身についていなければ、おそらく、相手が何を言っているのかも正しく理解できないだろうし、ましてや、自分の方から積極的に話をしていくこともできないだろう…つまり「『社会人として求められる』コミュニケーション力」が欠如しているということになってしまうのである。
「コミュニケーション力」というと、とかく「聞く技術」だとか「話し方のスキル」などいった「テクニック」や「スキル」の部分ばかりをイメージしがちであるが、少なくとも仕事をこなしていく場面では、そのようなテクニックやスキルは「ある程度の知識」が伴った上で初めて活きてくるものであって、単にテクニックやスキルが身について(いると思い込んで)いても、それに見合った知識が伴わななければ「『社会人として求められる』コミュニケーション力」ということでは、残念ながら不完全なのである。
そこに気が付かず、例えば「知識なんて全然無くても、とにかく『ヤル気』があれば何とかなるだろう」…などと思っていると、結局、社会人になってから苦労することになる。もちろん、社会人になってから「このままではいけない…」と感じて、そこから知識を増やす努力が出来ればよいのだが、それにより早く(就職する前、さらに言えば就職活動をする前に)気付けた方が望ましいのは、今更言うまでもないだろう。いずれにしても、このタイミングで、最低限の筆記試験対策に取り組むことを避ける…という行為は「取り組まなければならないことを単に『先送り』しているだけ」であることは肝に銘じておいた方が良いだろう。
⑤ 面接で「きれいな受け答え」をしようとしすぎていなかったか?
応募書類や筆記試験は通過するのだが、面接まで進むと思うようにいかないという人も多いかもしれない。それは、面接で「きちんと答えなければ…」「うまく答えなければ…」などと、必要以上に意識を持ち過ぎているからかもしれない。
面接というのは、確かに「採用側からの質問に対して応募者が答える」という流れで進んでいくのが一般的ではあるが、その人を評価する側面としては「答えの内容(そのもの)」と合わせて、ある程度緊張をするような場面で、お互いに面識の無い人同士で会話のやり取りをするという「社会人としてよくある場面」にそれなりの対処ができるか?…つまり、先程も触れた「『社会人として求められる』コミュニケーション力」をそれなりに発揮できるのかを、面接での質問のやり取りを通じて確認する…という側面があるということを意識していただきたい。
そのように言うと「面接(という特別な場面)だから、とても緊張してしまうんです。日常の会話はきちんとできます!」と反論したくなる人も多いだろう。その言い分は、心情的には分からなくはないのだが、採用選考という場面においては、残念ながら、おそらくその言い分は認められないと思ったほうが良い。採用担当者は(少なくとも面接を行っている時点では)「『普段のあなた』がきちんとした会話ができる人なのか」どうかは知らない…言い換えれば、面接官にとっては、面接の「その(限られた)時間の中で得られた印象・アピール内容」だけで、その応募者が「当社にふさわしい人物かどうか」を判断するしかないのである。
つまり、もし、普段のあなたがそういうタイプではなかったとしても、面接になったらガチガチに緊張してしまって、面接官の質問がまともに耳に入らない、自分がアピールすべきことをまともに伝えられない…という姿を見せれば、面接官は「『面接ですら』こんなに緊張してしまうのなら、実際の仕事の現場で初めて会う取引先の人の前でも、ガチガチに緊張してまともなやり取りが出来ない可能性が高いだろう」と判断せざるを得ない…ということなのである。
だからと言って、逆に、必要以上に自分のことを良く見せようとして、嘘とまでは言えないものの、事実とかなり異なるほどに話をに膨らませたりしてしまう(「オーバーアクション」的なアピールをしてしまう)と、それを見抜かれた挙句「仕事の場面でも大袈裟なことを言ったり、誤解を与えるようなことをして、仕事の相手に迷惑をかけてしまうのではないか?…そんな人は怖くて当社では採用できない」…などといった評価をされてしまうかもしれない。
結局のところ、面接でのやり取りについては、変に力を入れすぎず、できる限り「自然体」で臨んだほうが良い結果になることが多いと思われる。(ただし、それは「ありのままの自分を見せれば良い」ということとは違う。あくまで面接が「自己アピール」の場である以上、今まで述べてきた通り、採用する側が期待するポイントを押さえた自己アピールが必要だし、そのようなアピールができるようになるための「自己理解(自己分析)」「企業理解(企業研究)」を十分に行った上で、それを素直に言葉で表現すれば十分…という意味だということはくれぐれも間違いないようにしたいただきたい)
確かに、面接が「選ばれるか?落とされるか?」という厳しい場面であることは間違いないが、そういっても、相手も「人」である。面接という場面において、応募者が最も求められていることは「『人』としてのあなたの魅力」と「その会社で頑張っていきたいという熱意」をどれだけ自然にアピールできるのか…であることを今一度しっかり意識して、面接に対する「不必要な不安や恐れ」を持たないようにしていただきたいと願う。
◎「就活クリニック」は、今回が最終回となります◎
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
特別編・後半 | (2015年4月27日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2) |
特別編・前半 | (2015年4月20日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1) |
第24回 | (2015年4月13日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤ |
第23回 | (2015年4月6日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと④ |
第22回 | (2015年3月30日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと③ |
第21回 | (2015年3月23日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと② |
第20回 | (2015年3月16日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと① |
第19回 | (2015年3月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥ |
第18回 | (2015年3月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤ |
第17回 | (2015年2月23日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④ |
第16回 | (2015年2月16日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③ |
第15回 | (2015年2月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと② |
第14回 | (2015年2月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと① |
第13回 | (2015年1月26日掲載 ) | 「雇用される」ということについて③ |
第12回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「雇用される」ということについて② |
第11回 | (2014年1月13日掲載 ) | 「雇用される」ということについて① |
第10回 | (2015年1月5日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑩ |
第9回 | (2014年12月29日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑨ |
第8回 | (2014年12月22日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑧ |
第7回 | (2014年12月15日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑦ |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動に対する心構え④ |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動に対する心構え③ |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動に対する心構え② |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |