「雇用する」「雇用される」ことの『本質』を理解せよ!
先回は「まずは押さえておくべきポイント」として2つのポイントを挙げたが、今回は「会社の力になりそうな可能性」ということについて考えてみたい。
採用側が、応募書類(履歴書・エントリーシートなど)で皆さん自身のことについてまとめさせてみる、あるいは面接で様々な質問をしてくるのには、当然のことであるが、その会社としての「目的」や「意図」というものがあるはずであり、ただ、皆さんのことを試してみたり、皆さんの気持ちを弄んだりしているわけではないだろう。
では、その「目的」や「意図」とは何なのだろうか?…それは、先回述べた通り「その人が『その会社が発展していくための力』になれる可能性があるかどうか?」を見極めるということであろう。もちろん、個別の質問や問いかけには、その質問から確認・把握したいポイントというものがそれぞれあるのだが、どの質問も、最終的には、この「戦力になれそうな可能性」を見極める…というところに辿り着くと言ってもよいだろう。
「戦力」「会社の力になる」などという言葉を聞くと、「それは、自分の個性を出さずに会社に対して服従しろということなのか?」とか「会社の歯車になれということか?」などと考えてしまう人が結構見受けられるのだが、それはかなり「一面的な見方」である。
会社というのは「モノを作る」「モノを販売する」「サービスを提供する」…など、それぞれ「事業内容」がある。また、事業内容は同じ…例えば「モノを販売する」事業をする会社でも、ある会社は「安いモノを大量に販売する」、別の会社は「高品質なものを一つずつ丁寧に販売する」…といったように考え方や方向性、いわゆる「事業方針」も違ったりする。
そして「業務内容」や「事業方針」が違えば、当然、そこで働く人に求められる能力や特性(強み・長所など)も違ってくる。…となると、人を雇うにあたっては、その人が持っている能力や特性が、会社が求めるものをより多く持っている人を雇いたい、また、同じ給料を払うのであれば、より高い能力や特性を持っている人を雇いたいと思うのは当然のことであろう。
しかも、1日・1週間など、ごく限られた期間ならともかく、社員として雇う以上は、数年~数十年単位でどの程度会社の力になれるのかを考えていくから、雇った人の能力や特性の差が会社に与える影響というのは非常に大きなものなのである。だからこそ「どの人を雇い入れるかを見極める=採用選考」というのは採用する側にとっても「非常に重大なこと」なのである。
そして、これは裏を返せば、皆さんが応募する企業・就職する企業を決めていく際にも全く同じことなのである。
皆さんも、持っている能力や特性はそれぞれ違うだろう。そして、その能力や特性を「働くという場面」で活かしていくためには、自分が身につけている能力や特性を求めていない会社より求めている会社を、また会社が求めるレベルが自分自身に身についているレベルに近い会社を選んだ方が、自分自身が働きやすい可能性が高い…ということはイメージが出来るのではないだろうか。
だからこそ、就職活動における自己分析では、自分自身の能力や特性(それらを合わせて「適性」と言えるかもしれないが)を「何となく(自分の「中」だけで理解できている程度)」ではなく、知らない人にも理解できるぐらいに、はっきりとさせておかなければならないし、また、相手が求めているものについてもしっかり理解しておく必要があるのだ。(これが本当の意味での「企業研究」であり「志望動機・理由をまとめること」である)。
そして、これについては、当然のことながら「誰も共通する絶対的な答え」や「正しい・正しくない」といったものは無く、自己分析をしっかり行っていくことで、自分だけの「答え」を見出していくしかない…ということでもある。
つまり、就職活動(採用側にとっての採用選考)というのは、採用側が求めているものと、皆さん(応募者)が持っているものが「どの部分で」「どれぐらい」重なるのかを確認するための機会であり、その重なりがより大きい人が採用に至る…と考えるべきであろう。そう考えれば、先程述べた「会社の力になる」ということが、「会社への服従」とは違うことも理解していただけるのではないだろうか。
また、さらにこの視点で考えていけば、いくら会社が「採用は人物(人柄)重視」と言っても、会社が求める最低限の能力や特性が身についていなければ、採用には至らない…「いい人」「真面目」「一生懸命頑張る」ことをアピールするだけでは不十分であることにも気がついていただきたい。
「人柄の素晴らしさ」や「真面目さ」だけで、その会社としてこなすべき業務をこなせるというわけではない。…誤解の無いように強調しておくが、これは、人柄が採用選考で評価されない…ということではない。つまり、数学の論証問題などで出てきそうな感じの言い回しだが・・・
●「人柄が良い人」だから「その会社の戦力になれる人」とは必ずしも言い切れないから「人柄の良さ」だけでは採用しない。
●「会社の戦力になれそうな人」が何人かいて、その中から採用する人を選ぶのであれば、「人柄が良い人」を選ぶ可能性が高い
…ということなのではないだろうか。
今回お伝えしたことをしっかり意識し、自己分析、さらには企業研究をしっかり時間をかけて進めていくことで、やみくもに内定を得るための就職活動ではなく、本質をとらえた「地に足の着いた」就職活動につなげていただきたいものである。
◎次回(自己分析編・第4回)は11月24日更新予定となります。
バックナンバー
第11回 | (2015年2月2日掲載 ) | 面接における自己表現② |
第10回 | (2015年1月26日掲載 ) | 面接における自己表現① |
第9回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか |
第8回 | (2015年1月13日掲載 ) | 「自分の強み・長所」をどうまとめるか |
第7回 | (2015年1月5日掲載 ) | 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2) |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1) |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(3) |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(2) |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(1) |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 自己分析をする「意味」について考える |