まずは自分自身の「仕事に対する価値観」を理解せよ!
今回が「自己分析編」は最終回。前回に引き続き、前向きな気持ちで自己分析を進めていくにために特に意識しておきたいと思われるポイント…今回は「自分が持っている『仕事に対する価値観』を自分自身できちんと理解することの大切さ」について考えていくことにする。
長所・短所などの特性が人それぞれ違うように、「どんな仕事をしたいのか」「どのような働き方をしたいか」に対する考え方も人それぞれ違う…それは当然である。
これは会社や組織でも同じである。「自社のモノやサービスをどのように提供し、社会の支持を得て行きたいのか」についての考え方は、会社によってそれぞれ違う…これがいわゆる「企業理念」「企業風土」「事業方針」などといった形で示されているが、この違いがあるからこそ、世の中には様々な業界が存在し、また、ある業界の中に複数の会社や組織が存在し、消費者はその中から自分の価値観に合わせてモノやサービスを選ぶことが出来るのである。
就職活動は「社会人としての進路を選択していくための活動」である。そう考えていくと、当然のことながら、自分自身が持っている「こんな仕事をしたい」「こんな働き方をしたい」などといった仕事に対する価値観と、その会社が目指している「自社のモノやサービスをどのように提供し、社会の支持を得て行きたいのか」という会社としての価値観がより近い会社の方が、そうでない会社よりも「進路の選択先」として望ましいということは、このコーナーの第3回でも述べた通りである。
では、そのような会社に巡り合うために、まず、何をしなければならないのかといえば、自分自身が持っている「こんな仕事をしたい」「こんな働き方をしたい」という思い…つまり「自分自身の仕事に対する価値観」を自分でしっかり理解することなのである。特に就職における「自己分析」「自己理解」というのは、自分自身の特性だけを理解すれば十分ではなく「自分の特性を自分の携わる仕事にどのように活かしていけそうなのか」まで、しっかり考え、まとめていく必要がある。
ただ「まずは『自分自身の仕事に対する価値観』をしっかり理解せよ」…という言葉だけを聞くと、認識違いを起こしてしまう可能性があるので、その点は確認しておこう。
まず、自分の価値観をまとめてみるということは「自分を中心に」考えるということとは意味が違う…ということである。自分の価値観を先に明らかにすると、次に会社の価値観を確認していく時に、自分自身の価値観に「合わせてくれそうな」会社や組織を求めていってしまう人があるが、それは間違いである。
会社や組織に「雇用される」以上は、あくまで会社や組織の持つ価値観」が基本にあって、雇用される側がそれに合わせていくのは当然である。もし、そうでなければ、個人がそれぞれ自分の「好き勝手」にしてしまう…そうなれば、会社や組織の秩序が維持できなくなり、その会社や組織は存続出来なくなってしまうだろう。だから、会社や組織が維持し発展していくためには、従業員一人一人が会社や組織の掲げる価値観に合わせていくのであって、会社や組織の方からあなたの価値観に合わせてくれるということはあり得ない。しかし、だからと言って「従業員は、会社や組織の価値観に合わせなければならないのだから、個人としての価値観を持っていても意味がないし、会社や組織の言いなりになっていればよい…」と考えるのも間違いである。
混乱してきた人もいるかもしれないが、まとめるとこういうことである…まずは自己分析で「自分の仕事に対する価値観」を理解する。その上で、今度は「会社や組織の持っている価値観(企業理念や企業風土)と、それを踏まえて、その会社では『どのような価値観を持った人を求めている』のか?」を理解する。そして、その会社の価値観と自分自身の価値観を並べてみて「どのぐらい価値観が重なるのか」を見ていくのである。
当然のことながら、重なる部分が多い会社や組織の方が「自分が合わせやすい=理想的な会社や組織」ということになる。例えば、価値観のポイントが10個あったとすれば、会社や組織の価値観と自分の価値観が10個全て合うということは、現実的にはなかなか無いだろう。しかし、3個合うより5個、5個合うより7個合う会社の方が「自分に合う」と自然に感じることができるはずであるし、その会社への志望度も、特に意識しなくても高くなってくるはずなのである。
これが本当の意味での「企業研究」であり、自己分析を志望動機につなげていく作業なのである。 よく「企業研究が大切」と言われるが、ただ単に企業が公開している情報を収集したり、会社が求めている人材像を「言葉として」知ることだけでは、就職活動においては企業研究をしたとは言えない。あくまで、そこに自分自身の価値観を照らし合わせる…つまり「自分」と「相手」を並べて考えてみることで初めて企業研究と言えるのである。
採用する側は「その会社や組織にとって、将来的に役に立つ人材を求めている」のだから、応募する側は「その会社・組織に自分が入ったらそのような人材になれそうか」を考える必要がある。その時に「自分自身の判断基準」がはっきりしないのに、その会社が自分に合いそうかどうかをまともに判断できるわけがないのである。
そういうことを意識せず、自分の価値観がきちんと理解できないまま就職活動を始めても、おそらく応募する会社の選別の仕方は「何となく行きたい会社とそうでない会社」みたいになるだろうし、何となく行きたい会社の「何となく」の部分がいつまでたってもはっきりとせず、まさに「何となく」のままなので、結局、採用選考でも中途半端なアピールになってしまうか、安易に「会社のためなら何でもやります…」などといったことをアピールしまい、採用側に「真剣に考えていない」と判断されてしまうだろう。
くどいようだが、そうならないためには、企業のことを理解していく前に自分自身の価値観を自分自身で理解にしておかなければならないのであって、これが、まさに自己分析で明らかにしていくべきところなのである。
自分自身の強みや長所の理解は、自分自身の「過去」「現在」の振り返りであるから「記憶をどう呼び起こすか」がポイントになるが、仕事に対する価値観というのは、将来の自分の姿も「想像しながら考えていく」ことが必要な分だけ、さらにまとめるのが大変なところではあるが、ここまで意識し、自己理解に取り組めたかどうかで、志望動機の内容に決定的な差が出てくると言っても言い過ぎではないぐらい重要なポイントであるので、是非、しっかりと取り組んでもらいたい。
◎次回からは「自己表現編(全5回)」になります。第1回は、2015年1月5日(月)に掲載(記事更新)の予定です。
バックナンバー
第11回 | (2015年2月2日掲載 ) | 面接における自己表現② |
第10回 | (2015年1月26日掲載 ) | 面接における自己表現① |
第9回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか |
第8回 | (2015年1月13日掲載 ) | 「自分の強み・長所」をどうまとめるか |
第7回 | (2015年1月5日掲載 ) | 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2) |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1) |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(3) |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(2) |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(1) |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 自己分析をする「意味」について考える |