アピールするには、その「根拠」や「裏付け」があるはずである!
先回は「学生生活で力を入れたこと」について考えてみたが、今回・第2回は、まさに自己アピールの中心となる「自分自身の特性=自分の持っている強み・長所」について考えてみたい。
「自分のことなのだからアピールなんて簡単なことではないか」と思っている人が結構多いのだが、まず、勘違いしてはいけないのは、「自己アピール」は「自己紹介」とは違うということである。
一体、どういうことなのだろうか…
確かに「自己紹介」も「自己アピール」も『知らない人に自分のことを知ってもらう』ための自己表現ということでは大きな違いはない。しかし、自己紹介が、単に「自分のことを知ってもらうこと」が目的であるのに対して、自己アピールは「相手(アピールを聞く側)が求めていることに自分は応えられる人物であることを相手に認識してもらう」という自己紹介より、より明確で、且つ意味の深い目的があるということをしっかり意識しておく必要がある。
そして、就職活動における『相手』(つまり採用側)の『求めていること』というのは、ずばり「その会社や組織が成長・発展していくための力になってくれそうかどうか」なのである。勿論、それぞれの会社や組織によって、細かい部分では個別の要望というものがあるのだろうが、あくまで根本的な部分では「その会社や組織が成長・発展していくための力になってくれそうかどうか」…繰り返しになるが、これに尽きると言ってもよいだろう。
特に新卒採用の場合は、社会人経験がない場合がほとんどなので、さらに正確に言えば「『将来的に』戦力になってくれる可能性を感じられるかどうか」ということになるが、いずれにしても、その『求めていること』に沿ったアピール内容でなければ、それは聞いている側にとっては聞く意味が無いということになってしまうのである。それだけに、採用選考において採用側が応募者のことを判断するためには、アピールする側が「そのようなことを」「どのように」アピールしてくれるのかが非常に重要なのである。
「どのようなこと」をアピールしていくべきかについてであるが、これは、先程述べた通り、採用側が応募者に求めていることは、その会社で力になってほしいということであるから、「その会社に入ってからも発揮できそうな」強みや長所を示すべきであろう。…と言っても、必要以上に難しく考えることは無い。なぜなら、強みや長所と言えるものは、おそらく「ある特定の場面でしか発揮できない」というものではなく、ほとんどが、日々の生活における様々な場面で活かすことが出来るはずのものだからである…少なくとも、「採用側が知りたい」強みや長所というのはそういうものである。
例えば「粘り強く物事に取り組むことができる」ということを長所として挙げるとする。これを長所としてアピールするのは、今まで、日常の様々な場面で粘り強く物事に取り組んできたからであり、そして、それは社会人になって、仕事の様々な場面でも発揮することができると考えているから、この応募者はこれを自分の長所としてアピールしているのだ…と採用側は考えるのである。つまり、逆の言い方をすれば、強みや長所を発揮した場面が仮に1つしか出てこないということであれば、それは長所を発揮したのではなく「その場面でたまたまそうだっただけなのではないか?それは強みや長所とは言えないんじゃないの?」…と解釈されてしまう可能性が高いということである。
だから、それを「アピールとして」相手にきちんと理解してもらうためには、過去に粘り強さを発揮した場面を「裏付け」としてきちんと示して、聞き手が「そこまでのことをやってきたのなら、確かにこの人は粘り強さを持っていると言えるよな…」と感じられるようにすること、さらに、その会社に入ったら、その会社の仕事の中で粘り強さを「このような場面で」発揮できると思う…という自分なりの考えを示すことが非常に重要になってくる。(会社に入ってからのことは、今の自分には「分からないこと」なので、あくまで自分なりの「考え」として示せば十分である。ただし、その会社の考え方や方針などを理解せず、一方的に自分の考えを示すだけでは、会社として求める人材像からズレてしまっている…という可能性もあるので、やはり企業研究はしっかりやっておくべきであろう)
お分かりいただけたかと思うが、「自分としては『自分は粘り強いところが長所』だと思っています…」というような、裏付けの無い「アピールする側の一方的・主観的な」アピールでは、はっきり言って、自己アピールとしては評価してもらえないということである。
自分で「思うだけ」なら、いくらでも自由に、好きなように思うことが出来る。仮に、そのような「自分勝手な思い」が全て相手に受け入れられるとしたら、あくまで理屈の上の話ではあるが、「ウソ」も全てOKということになってしまう。アピールがうまくいかないという人の中には「採用担当者が私の言うことを理解してくれない」と言う人も時々いるのだが、それは、採用担当者が十分に理解できるような裏付けと、その強みが会社に入ってからも活かせるものであることを伝えられない応募者の方に、ほぼ100%問題があると言ってもよい。
「知らない人に自分のことを知ってもらう」…言葉だけなら簡単なことのように思えるが、それが実際にできるかどうかは、その「根拠」や「裏付け」をどれだけ相手に理解してもらえるように示すことが出来るかどうかによって差がつく。それを意識しながら、自分のアピール内容についても確認してみてほしい。
◎次回(自己表現編・第3回)は1月19日更新予定となります。
バックナンバー
第11回 | (2015年2月2日掲載 ) | 面接における自己表現② |
第10回 | (2015年1月26日掲載 ) | 面接における自己表現① |
第9回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか |
第8回 | (2015年1月13日掲載 ) | 「自分の強み・長所」をどうまとめるか |
第7回 | (2015年1月5日掲載 ) | 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2) |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1) |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(3) |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(2) |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(1) |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 自己分析をする「意味」について考える |