とにかく「取り組みの内容」より「プロセス」が重要!
今回から「自己表現編」がスタートする。
この「自己表現編」では、応募書類や面接で効果的なアピールをしていくためのポイントを示していくが、自己分析編と同様に「答えのようなもの」や「小手先のテクニック」のようなものではなく、あくまで自分自身で考え、まとめていくための「後押し」的なアドバイスであることは理解していただきたい。
さて、採用選考において、必ず問われるといってもよい「3つのテーマ」…「学生生活で力を入れたこと(学生時代の取り組み)」「自己PR(強み・長所)」「志望動機・志望理由」…があるということについては、すでに理解をしている方も多いかもしれないが『必ず問われるといってもよい…』 とはっきり言われているにも関わらず、実際にアピールをしてみると、うまくいく人とそうでない人が出てきてしまうのはなぜだろうか?
それを分ける最も大きなポイントは、ずばり「『相手(採用側)が聞きたいことが何なのか』をきちんと理解した上で、自分がアピールすべき内容をまとめられているかどうか」であろう。
もし、そのアピール内容が採用担当者の聞きたいことから明らかにズレていたとしたら、それは「相手が知りたいことを伝えていない」のだから、厳しい言い方をすれば「何もアピールしていないのと同じ」なのである。
だから、このコーナーをご覧いただいている皆さんには「まずこれだけは押さえておくべきポイント」を理解していただき、アピールすべき相手に伝わるようにまとめていくための「手掛かり」を掴んでいただきたいと思う。
第1回から第3回は、その「3大テーマ」について一つずつ考えていくが、まず今回は「学生生活で力を入れたこと」について考えてみたい。特に、このテーマについては、その質問の「問いかけられ方」から質問の意図を勘違いしてしまう人が非常に多いのだが、一体どういうことなのか…?
このテーマの「真意」が分かっていない人は「学生生活で力を入れた『こと』は何ですか?」「学生生活で頑張った『こと』を教えてください」「困難を乗り切った『経験』を教えてください」…など、『こと』や『経験』について教えてほしいと言われているからと、その『こと』や『経験』の部分ばかりをアピールしてしまうのである。
さらに「具体的にアピールするように…」などというアドバイスを誰かから聞いていたりすると、その「事実」や「経験談」を具体的にアピールしようと必死になってしまうのであるが、おそらく、採用担当者が聞きたいのはその部分ではない。
では、何が聞きたいのかというと、ずばり「その取り組みを通じて自分なりに成長をしたと感じるところは何か」「その取り組みや経験を通じて何を学んだか」「困難を乗り切るために自分なりに考え工夫したことは何か」…などといったことである。まあ、この手の話は、一般的なアドバイスでも触れられていることなので、ここでは、もう少し掘り下げて考えてみよう。
今回取り上げているテーマである「学生生活の取り組み」に限らず、様々な問いかけや質問について、そもそも、採用側は「なぜそのようなことを応募者に問いかけて、応募者の回答を知りたい」のだろうか?
それは、ずばり「その応募者が会社や組織の力になれそうな人のか?」を判断したいからである。特に新卒採用の場合には「将来(数年~十数年後に)、その会社や組織の力になれそうかどうか…?」という言い方が正しいのだが、いずれにしても「労働の対価」として給与などを支払う以上は、明らかに採用側が求める働きに見合った働きが出来ないと判断した人をわざわざ雇い入れるほどの余裕は、時に今の会社や組織にはほとんどないだろう。
それを踏まえて「『学生生活の取り組み』をどうアピールするのか」ということに戻って考えてみると、重要なのは「その取り組みや経験を通じて自分自身がどのように『変化』したのか」であり、さらに「その変化が『何らかの形で会社や組織で取り組む仕事にも活かせそうだ』というイメージを採用担当者が持てるのかどうか」ということになる。
これは「●●が出来るようになりました」というような能力的な面だけではない。例えば「ねばり強く物事に取り組む」「積極的に学び取ろうとする姿勢」「周囲の人たちに対する配慮」…など、「人としての特性や強み」でも勿論良い…というより、学生時代に身につけた能力というのは、社会人としても通用することが明白なもの(例えば司法試験合格、●●国家試験合格…といったようなもの)でなければ、採用側(社会人)から見た場合に、アピールする側が期待するほどは重視していない場合が多いので、むしろ「特性や強み」の部分、つまり「個性」や「人柄」に関する側面を示したほうが、採用担当者にとっても「この人が会社の力になれそうなのか」を判断する材料としては分かりやすいだろう。
そうは言っても、なかなかピンとこない人もいると思われるので、一つのアピール例を挙げてみよう。
「学生時代に取り組んだ事は何ですか?」と聞かれて「夏休みを使って自転車で日本一周をしました!」という人がいたとする。「自転車で日本一周をした」ということについては、採用側もそれなりに興味を示してくれるだろう。しかし、ここからが肝心なのだが、自転車で日本一周をしたからといって、必ずしも「その応募先の会社でやるべき仕事がこなせる」ということにはならない。ここで、その日本一周をしていた時の「状況」や「思い出話」の類をいくらアピールしても、採用側としては、そのアピールが「会社としてやってもらいたい仕事をこなせる」かどうかを判断する材料になる可能性は小さい。つまり、採用側の目的からしたら「意味の無いアピール」になってしまっているのである。
例えば「一口に日本と言っても、地域によって文化や風習、物事の考え方などに様々な違いがあることを肌で感じることが出来た。それ以来、自分にとって『異質』だと感じるものでも、最初から否定や拒絶をするのではなく、まずは一旦受け入れてみてから、自分に合うかどうかを判断するようになった」「トレーニングも含めて、自転車で走り続けたおかげで、同年代の人に比べて明らかに体力がある」…などといったような内容が出てきて、初めて採用側も「その変化や身につけたものを活かしてもらうことで、将来的にこの会社で力になってくれそうなのか」を判断できるようになる…ということなのである。
ここでは「日本一周」という、誰もがすぐに出来ることではないことを例に挙げたが、ここで間違いがないようにしてほしいのは、その取り組みが「すごいこと」なのかどうかは、採用側の判断にはあまり影響しないということである。繰り返し強調するが、もし、その取り組み自体は誰でも出来るようなことであっても、ポイントになるのは、その取り組みを通して出てきた「自分の中に起こった変化」や「自分なりの創意工夫」が何なのかである。そして「それは社会人になっても活かせそうなものである」ことを自分なりにしっかり意識できているかどうか…なのである。
勿論、採用担当者も「人」なので、アピールが「事実の羅列」であっても、その中から出来る限り、その人の特性や人柄を見出そうという配慮や努力はしてくれるだろう。しかし、最初からポイントをきちんと押さえて「的を射た」アピールができていれば、どの応募者にも同じだけ与えられている「(応募書類であれば)文字数」「(面接であれば)時間」の中で、ポイントを押さえられていない人に比べて、明らかに「深いところ」まで採用側にアピールできることになる。それによって、採用側としても「会社や組織として求める人材像」にどれぐらい合っているのか、より的確に判断ができるようになるのである。
「学生生活の取り組み」をまとめる上では、特に「この質問から知りたいことは『自分自身の変化』の部分である」をいうことをしっかりと意識しながら、アピール内容をまとめていってもらいたい。
◎次回(自己表現編・第2回)は1月13日更新予定となります。
バックナンバー
第11回 | (2015年2月2日掲載 ) | 面接における自己表現② |
第10回 | (2015年1月26日掲載 ) | 面接における自己表現① |
第9回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか |
第8回 | (2015年1月13日掲載 ) | 「自分の強み・長所」をどうまとめるか |
第7回 | (2015年1月5日掲載 ) | 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2) |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1) |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(3) |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(2) |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(1) |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 自己分析をする「意味」について考える |