言うべきことは、まず「先に」言ってしまおう!

この連載も今回が最終回。今回は面接における「表現のポイント」について考えてみたい。

先回、採用側が知りたいことが何なのかをしっかりと理解し、その上で自分としては「これだけはアピールしたい!」という『キーワード』だけはしっかりと自分の中ではっきりさせておくことが重要であるということを述べた。「採用側が知りたいこと」については今までの連載で述べてきたつもりなので、ここでは「それをどのように伝えるか」に焦点を当てていくことにする。

まず「キーワード」であるが、「ワード」という言葉通りで「一言・二言」程度で十分だろう。この段階から文章にしてまとめて覚えようとすると、覚えたことをそのまま言葉にすることに必死になってしまい、先回述べた通り、双方向のコミュニケーションとしては不自然な感じになってしまう可能性が高い。

例えば「自分の強み」に関するキーワードなら『取り組んだことは必ず最後までやり遂げること』とか『行動力がある』といった感じで一言まとめておけば十分であろう。ただし『●●感』『●●的』『●●力』といった言葉は、人によって言葉の捉え方(イメージの持ち方)が異なる場合が多いので注意が必要である。例えば『行動力』と一口に言っても、Aさんは「考えたことは、ただ考えるだけでなく必ず行動に移すこと」と考えるが、Bさんは「とにかくいろいろな場所に出かけること」、Cさんは…、と持つイメージが人それぞれ違う。それだけに、このような言葉を用いる時には、その言葉について「自分なりの」意味をはっきりさせておく必要があるだろう。

そして、このような解釈の違いを防ぐことも含め、そのキーワードから、面接官がより具体的なイメージを持てるようにする、あるいはキーワードに説得力を持たせるために必要となるのが、いわゆる『根拠・裏付け』である。

例えば、「取り組んだことは必ず最後までやり遂げることが私の強みです」とキーワードだけ伝えても、その人のことを知らない面接官からしてみればよく分からないだろうし、場合によっては「ウケを良くしたいために本当ではないこと(ウソ)を言っているかも…」などと思われてしまうかもしれない。そうではなくて「そこまで具体的な話があって、それを踏まえてそう言っているのなら、確かに『取り組んだことは最後までやる』というのがあなたの強みなんだね!」というように思ってもらうためには、やはり、それを示す具体的なエピソードなどが必要になってくるのである。

具体的なエピソードに何の意味があるのかといえば、今述べた通り、ずばり、その『キーワード』がそうだと言えるだけの「根拠・裏付け」を示すということに尽きる。逆に言えば、そのエピソードがキーワードの根拠・裏付けにならないような内容であれば、どんなに具体的にアピールしたとしても、面接官にとっては「特に知りたくもないことを長々と話されてもね…」しまうことになってしまうのである。よく「具体的にアピールしなさい」というアドバイスをされる場合もあると思うが、ただそれを「そういものだ」で片づけてしまうのではなく、その意味についてはしっかりと理解をしておきたい。

そして、以上のことを踏まえて、話の基本的な展開は次のようにしていきたい。

『結論(もっとも伝えたいキーワード)』⇒『根拠・裏付け』(⇒必要に応じて、まとめとして再度『結論』)

このような話の展開は、社会人もプレゼン―ションなどで良く用いているし、似たような話し方の手法としてPREP法(プレップ法…①結論・ポイント(Point)⇒②理由(Reason)⇒③具体例(Example)⇒④再度、結論(Point)という展開)というものもあるが、いずれにしても結論を先に述べて、その根拠を示すという手法は、相手に分かりやすく伝えるための話し方として非常に有効である。

また、面接など、緊張感を伴う場面などは特にそうであるが、話す方は一生懸命話すあまりに「結局最後には何を言いたかったのか自分でもよく分からなくなってしまった」ということになってしまう場合がある。そのような場面で、先に結論を示しておくことは、話が本題から逸れてしまった場合でも途中で軌道修正がしやすくなるし、そうでなくても「少なくとも『一番伝えたいことを伝えられなかった』ということにならない」ためにも非常に有効なことである。

いきなり、上記のようなまとまりのある展開で話をしていくのは難しいかもしれないが、とにかく、結論を先に出す「クセ」をつけることは今からでも始めてもらいたいし、そのためには様々な人と実際に会話をする機会を持つことも重要であろう。

キーワードもいくつかまとめる必要はあるが、まずは以下のいわゆる「3大テーマ」に関する問いかけについて、自分なりの『キーワード』とそのキーワードを示す「根拠・裏付け」を自分なりにしっかり考えてみていただきたい。

●大学/学校(社会人の場合は前職で)で何を学び、何を身につけたと思いますか?
●あなたの長所・強みは何ですか?
●なぜ(他ではなく)当社を志望するのですか?

これらの問いかけを基本として、あとは自分なりにアピールのポイントとなりそうな内容について『キーワード』と「根拠・裏付け」をまとめておこう。あくまで自分自身のことであるから、自己理解がそれなりに進んでいれば、無理に「答えを頭に叩き込もう」としなくても済むはずである。もし、これらの内容について、なかなか思うようにまとめられないという場合は、まだ自己理解が不十分である可能性もあるので、今一度、自己理解からしっかり取り組んでいただきたい。(「急がば回れ」ではないが、その方が結局近道である)

また、自分自身で「これだけは必ず伝える!」という「自分なりの軸」をしっかりと持っておくことで、面接に臨む際にも多少は余裕が出てくることであろう。それが、面接官が知りたい大きなポイントの一つである「あなた自身の人柄」を自然に示すことができるようになることにもなり、その面接が自分自身にも、面接官にとっても、より内容の濃いものになっていくことだろう。そして、それはおそらく「自分自身が『充実感』『納得感』を感じられるような就職活動」の実現に結びついてくるに違いない。

一人でも多くの方が、そのような就職活動を実現できるようになることを心から願っている。

◎このコーナーは今回が最終回になります。ご愛読ありがとうございました。

バックナンバー

第11回 (2015年2月2日掲載 ) 面接における自己表現②
第10回 (2015年1月26日掲載 ) 面接における自己表現①
第9回 (2015年1月19日掲載 ) 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか
第8回 (2015年1月13日掲載 ) 「自分の強み・長所」をどうまとめるか
第7回 (2015年1月5日掲載 ) 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2)
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1)
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(3)
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(2)
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(1)
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 自己分析をする「意味」について考える
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