「完全無欠な人間」なんていないし、誰もそれを期待していない

先回の最後に自己分析は非常に時間もかかるし、なかなか「自分なりの答え」が出てこない場合もあって「大変だ」と思うこともあるだろう。しかし「大変なこと」だからこそ、それにしっかり取り組めたかどうかで実際の就職活動の段階で差が出てくるのである…ということを述べた。

そのように言ってしまうと、それだけで「自信が無い」と尻込みをしてしまう人もいるかもしれないが、それでは、いつまでたっても自信もつけられないだろう。自信を持てるようになったら取り組むのか、取り組みながら自信をつけていくのか…自己分析においては間違いなく後者である。とにかく「前向きな気持ち」を持って動き出さないことには始まらない。

そこで今回と次回は、前向きな気持ちで自己分析を進めていくために特に意識しておきたいと思われるポイントについて触れていくことにする。まず、今回は「自分自身の長所(強み)・短所(弱み)」の面について考えてみたい。

先回までも繰り返し述べているように、特に「充実した就職活動につなげていくための自己分析」で目指すべきところは、あなたのことを知らない人に、限られた時間や文字数であなたの人柄を理解してもらい、その会社や組織で戦力としてやっていけそうだという可能性を感じてもらえるような「自己アピール」につなげていくことであろう。では、そのために自己分析の段階で考えておくべきポイントは何だろうか・・・?

「自分のことをアピールする」と言うと、とかく、自分自身の「良い部分」・・・「長所」「強み」「能力」などを伝えようとすることばかりに必死になってしまうものである。もちろん、それが間違っているというわけではなく、実際に自己アピールをしていく場面ではそれが中心になるのは当然である。しかし、少なくとも自己分析を進めていく段階では、良い部分に気付いたり、確認したり、まとめていくのと同じぐらいに、自分自身の「弱い部分」・・・「短所」や「欠点」「自分自身で足りないと思う部分」を見つめ、明らかにしていくことが重要であると考える。

なぜ、そのようなことをする必要があるのか・・・?

それには大きく2つの理由がある。ひとつは「長所と短所はいわば『表裏一体』」であるから、そしてもうひとつは、自分の短所を自覚できていないという人は、会社や組織の一員としてやっていくにあたって、コミュニケーションやチームワークなどの面で「いろいろと問題を起こす可能性がある…」とみられる場合があるからである。

まず「長所と短所は『表裏一体』」ということであるが、例えば「好奇心が旺盛」ということを長所に挙げたとすると、見方を変えれば「飽きっぽい」というような短所としての面も出てくるかもしれないし、さらに「飽きっぽい」いうことは、見方を変えれば「切り替えが早い」という長所にも捉えられる・・・というように、ある一つの特性に対して、それが単純に「長所or短所」と単純に分類されるものではなく、行動や考え方の特性には、長所として捉えられる側面と短所として捉えられる側面の両方の面がある場合が圧倒的に多いのである。

この点が意識できていると、自分の持っている特性について深く考える、そしてそれを言葉にまとめていくときにスムーズに進みやすい。良い側面だけを必死に探そうとすると、なかなかいくつも挙がらず行き詰まってしまいがちだが、一つの特性について「これは見方を変えてみると…」とか「これを言い換えると…」というように掘り下げていくと、自分が今まで気付かなかった部分も含めて、結果的に自分自身の良い面が数多く見出すことが出来る場合が多い。

・・・ということは、理屈でいけば、自分の長所を挙げていけば短所も同じぐらい挙がることになる。このテーマで相談を受けると、多くの相談者から「自分の短所ならいくつか挙げられるけど、長所は全く思い浮かばないので困っている…」といった悩みがきかれるのだが、それであれば、その短所を『スタート』にして「長所と短所の裏表」を考えていけばよいのであって、その「考えるための材料」が出てきているということは、短所も含めて全く何も出てこない人に比べたら、むしろ自己分析が進んでいると言えるぐらいである。

そもそも、誰もが(その度合いの多い少ないはあるかもしれないが)必ず長所と短所に両方を持ち合わせているだろう。つまり、短所が全く無い「完全無欠な人間」などいないのであって、そこは採用担当者だって、自分自身の身を持って分かっているはずである。

だから、採用選考の面接などで、長所と共に「短所」を聞かれる場合もよくあるが、これは、その質問をする側も「完全無欠な人間なんているわけがない」という前提で問いかけているはずである。それなのに、いかにも自分は短所がなく「非の打ちどころがない人間」です…みたいなアピールをしたら、アピールしている側はしっかりアピールしているつもりでも、おそらく聞いている側は「明らかに無理をしている」と思うだろうし、自己理解が十分出来ていない…と判断するだろう。

そして、この「完全無欠な人間なんていない」という意識を持てているかどうかが、2つ目の理由として挙げた「自分の短所を自覚できていない人は、会社や組織の一員としては何らかの問題を起こす可能性があるとみられる場合がある」ということにも関わってくるのである。

会社や組織で物事を進めていくにあたって、全てを完全に一人で行うという場面は、ほとんどないと言ってもよいだろう。特に一人で黙々と取り組んでいるという印象がある研究職などでも「完全に一人で仕事が完結する」ということはほとんどないと聞く。つまり、ほぼどんな場面においても、複数の人が関わり、協力しながら進めていく…いわゆる「チームプレー」の精神が求められるということである。

複数の人が協力しながら物事を進めていくことの大きな意味のひとつは、『三人寄れば文殊の知恵』ではないが「それぞれの人が持っている強みを活かしていくことで、個人がバラバラで物事を進めるより、より効率的に大きな成果を上げていくこと」である。これは、言い方を変えれば「人それぞれ持つ弱い部分を、その部分に強い人がフォローしていくことで、個人がバラバラで物事を進めるより、より効率的に大きな成果を上げていく」ということである。

そのような中で、もし、自分の弱い部分が理解できていない、もしくは自分なりに理解はしているのだが、プライドや見栄などが邪魔をして、それを素直に認められない人が仲間にいたらどうだろうか?・・・その人は余計なところで出しゃばってみたり、その分野に強い他の人に協力してもらったほうが早く、且つ確実に物事が進むのに、その協力を拒んだりして、結局、チームとして物事を進めていくメリットを活かせなくしまう可能性が高くなるのである。会社や組織はそんな人をわざわざ仲間にしたいと思うだろうか。

つまり、自分の弱い部分もきちんと理解し、それを素直に認められるというのは、社会人としては、自分の強い部分を理解しているのと同じぐらい大切なことなのである。

ただし、自分の短所を「短所があることはしょうがないこと」とか「自分の短所は誰かがフォローしてくれるだろうから、自分は今のままでよい」などと思ってよいということではない。短所は短所として認めた上で「それを少しでも克服していこう」という姿勢を持つことは、非常に重要であることは言うまでもないだろう。

面接の質問に対して、ただ「良い答え」を出したい・・・という考え方で自己分析を進めていくと、結局は的外れな方向に行ってしまう可能性が高い。採用側が知りたいと思っている「あなたの人柄」とはどういうところなのか、そして「なぜ、それを知りたいのか」をきちんと意識しながら、自己分析を進め、自分なりのアピールポイントをまとめていくことが大切である。

◎次回(自己分析編・第6回)は12月8日更新予定となります。

バックナンバー

第11回 (2015年2月2日掲載 ) 面接における自己表現②
第10回 (2015年1月26日掲載 ) 面接における自己表現①
第9回 (2015年1月19日掲載 ) 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか
第8回 (2015年1月13日掲載 ) 「自分の強み・長所」をどうまとめるか
第7回 (2015年1月5日掲載 ) 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2)
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1)
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(3)
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(2)
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(1)
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 自己分析をする「意味」について考える
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