質問に「うまく答える」という考え方は見直そう!

自己表現編の第4回・第5回は面接について取り扱っていく。そして、まず今回は面接に対する「意識の持ち方」について考えてみたい。

面接といえば、「面接官から出された質問に答える」というのが基本的な流れであると考えてしまいがちである。確かに、面接の場面で面接官から最後に聞かれることが多い「何か質問はありませんか?」という問いかけ以外は、面接官の方が質問をしてきたことについて応募者が答えるという進み方が多いので、その考えが間違っているとは言えないのだが、ここでは「出された質問に『うまく』答えることが重要ではない」…ということを意識していただきたい。

「うまく答える」というのは「きれいに答える」と言い換えることもできるかもしれない…つまり、出された質問に対して即答し、よどみなくしゃべることが出来れば、面接として『うまくいった!』と考えてしまう人が多いのだが、それは必ずしもそうではない。特に「模範解答」みたいな形で、モデル役の学生が面接の受け答えをしている映像などを見たことがある方は「あんなふうに答えられなければならないのか…。でも、自分はとてもあんなふうにはしゃべれない…」と不安になるかもしれないが、そのことに不安を感じる必要は全く無い。なぜか?

良く考えてみてほしい…例えば普段の会話なら、聞かれたすべてのことに即答するわけではなく、時には考えながら話すということもあるだろう。あるいは、話している時に言葉がうまく出てこないことがあったり、いわゆる「噛んでしまう」ことだってあるだろう。…それは会話の中では当たり前のことであって、それが面接だから、その場面だけは特別だということはない。面接の始まりから終わりまで、ずっと、モデルで出てくる学生のような(一見すると完璧に見える)受け答えをしようとする方が明らかに無理があるのである。まずは、それをしっかり意識していただきたい。

それを踏まえて、面接において何が大切なのかといえば「面接官ときちんと会話のやり取りが出来ること」つまり「双方向のコミュニケーションがきちんと取れるかどうか」ということである。(このあたりは、今後「就活クリニック」の方でも取り扱うので参考にしていただきたい)

つまり、多少その場で自分の考えをまとめるために沈黙が発生したり、言葉に詰まることがあっても、面接官が「その質問で何を知りたいのか」をきちんと理解し、それに対して自分なりの答えを「面接官に理解できるように」示すことが出来れば何の問題もない。むしろ、自然な感じでしっかりとしたコミュニケーションを取ることが出来る人物だと面接官も感じてくれるに違いない。

ところが、それを理解せず「出された質問に対して、きちんと答えるために準備をしなければ…」という考え方になってしまう人が多い。そして、そのような人の多くがすることは「聞かれそうな質問を予測してそれに対する答えを予め考えておく」ということである。しかし、残念ながらこのような準備の仕方をして面接がうまくいったという話は(少なくとも筆者自身は)聞いたことが無い。

…当然である。面接で出される質問のパターンは無限と言ってもよい。もっと言ってしまえば、面接官がその場の思いつきでする質問もあるかもしれないし、ある質問で出た答えに対してさらに質問をしてくることだって考えられる。質問に対して答えをしっかり考えてうまく答えようとする人は、準備が出来ている質問に対しては、確かに即答し、よどみなく答えられるかもしれないが、そうでない質問には一気に答えに窮してしまうことが多い。さらに準備が出来ている質問ですら、緊張などで準備しておいた内容を忘れてしまい、途中までスラスラ答えていたのに、急に言葉が出なくなるといった場合もある。

繰り返しになるが、採用側が求めているのは「自然なコミュニケーション(会話)」が成り立つことであって、質問に「うまく答えて」ほしいわけではない。おそらく自然な会話のやり取りがある程度成り立っていることがまず前提にあって、その上で答えている内容そのものに対して、この会社の求める人材像に近いかどうかの評価や判断をしていると言ってもよいだろう。

なぜか?…それは、実際に社会人として働くことになった時に、まずは社内外の人ときちんと会話できることが必要だからである。面接の場面ですら(応募者にとっては面接が大事な場面なのかもしれないが、採用側は応募者が実際に働くことになった時に、このような会話のやり取りの場面でどうなるのかを見たいので、採用側にとって見たら「面接の場面ぐらいで」ということになる…)会話もまともに出来ないようであれば、実際の仕事の場面でもおそらく無理だろう…と判断するだろうし、わざわざ事前に答えることを全て頭に入れておかないと受け答えが出来ないような人だったら、実際の仕事の場面でもその場の状況に応じた柔軟な会話のやり取りが出来ないだろう…と判断するのである。

それだけに、「自分としてはうまくアピールできたつもりなのになぜダメだったんだろう…納得いかない」という人が時々いるのだが、それは「面接官が知りたいことに答えていなかった」という内容的な側面も原因として考えられるが、面接が「会話のやり取り」ということを意識できていなかったために、ただ一方的に自分がしゃべることに夢中になって、その場での双方向のコミュニケーションが成り立っていなかったということも原因として考えてみる必要がある。

では「頭の中に答えを入れておいても意味が無いのなら、面接に対する準備をしても全く意味が無いということか?…」と言えばそうではない。事前に出来ること、やるべきことはある。それは何かといえば、採用側が知りたいことが何なのかをしっかりと理解した上で、それについて尋ねられた時に、自分としては「何としてもこの言葉だけは面接官に伝えたい!」という『キーワード』的なものだけは事前にしっかりと頭の中に入れておくことである。ちなみに、この『キーワード』については、自己理解をしっかり進めていけば、自然と出てくるはずであり、それだけにやはり自己理解(自己分析)は重要なのである。

質問の仕方は無限にあるが、それを通じて採用側が知りたいことはある程度限られている。それは、先回までで取り扱った「3大テーマ」(学生生活の取り組み/自分の長所・強み/その会社への志望動機)とそれに関連する内容(「長所・強み」に関連して「短所・弱み」、「志望動機」に関連して「自分自身のキャリアビジョン(●年後の自分の姿)」…など)、そして、身につけている知識や教養に関すること(「最近の出来事で関心のあること」「最近読んだ本」…など)あたりだろう。そして、それらのポイントは、面接官にとっては、全て「この人が会社や組織の力になれそうか」「この人が仲間としてふさわしいか」を判断するための手掛かりになってくるのである。

それを踏まえて考えると、自分がどうしても伝えたい『キーワード』を面接官に理解できるように伝えることが出来るか、それをきちんとアピールした上で、面接官との「自然な会話の流れ」に乗ることが出来るのかどうかが面接の最も重要なポイントになってくるのである。

では、次回はその「キーワード」を実際に表現につなげていくためのポイントについて考えていきたい。

◎次回(自己表現編・第5回)は2月2日更新予定となります。

バックナンバー

第11回 (2015年2月2日掲載 ) 面接における自己表現②
第10回 (2015年1月26日掲載 ) 面接における自己表現①
第9回 (2015年1月19日掲載 ) 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか
第8回 (2015年1月13日掲載 ) 「自分の強み・長所」をどうまとめるか
第7回 (2015年1月5日掲載 ) 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2)
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1)
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(3)
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(2)
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動における自己分析とは(1)
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 自己分析をする「意味」について考える
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