「想い」と「動機・理由」の違いをしっかり理解しよう!
この連載の第3回は、応募する会社への「志望動機・志望理由」について考えてみたい。
3大テーマの中でも、先の2回で取り上げた「学生生活の取り組み」「自己PR」と今回の「志望動機・志望理由」とでは、捉え方・考え方が少し異なってくる。
「学生生活の取り組み」「自己PR」は基本的に「自分自身のこと」が基本にあって、「自分自身の価値をどれだけアピールすることが出来るか」がポイントであるのだが、「志望動機・志望理由」は「自分自身のこと」に加えて「相手(応募先)のこと」も十分に理解し、自分が「その応募先の求める人材に適合している」ということを相手に感じてもらう必要がある。
…つまり、応募先の企業や組織のことについても十分な理解ができていないと、採用側の印象にのこるような志望動機・理由がアピール出来ないということで、「学生生活の取り組み」「自己PR」に比べても、まとめるのが難しいのが、この「志望動機・志望理由」なのである。
では「相手(応募先)」の何を理解しなければならないのか…?それは、一言で言えば「その会社や組織が求める人材像」がどのようなものなのか…ということであるが、なかなかその一言の本質を理解するのも簡単なことではないので、これについては少し詳しく見ていこう。
まず、会社案内やホームページに「求める人材像」として示されているような「明るくて元気がある人」とか「好奇心が旺盛な人」といったレベルの言葉を、その言葉の意味だけで捉えているレベルでは不十分である。なぜなら、このような言葉は、人によって様々な捉え方が出来るからである。例えば「好奇心が旺盛な人」という言葉でいえば、「好奇心」とはどのようなものを指して好奇心というのか?…「旺盛」とはどれぐらいのことを旺盛だと言えるのだろうか?…そのイメージの持ち方は人それぞれ異なるだろう。
それだけに、志望動機・理由をまとめていく場合に非常に重要なのは、「『その会社や組織にとって』好奇心が旺盛だ」とはどういうことなのか…それがどこまできちんと理解できているかどうかなのである。
一口に「好奇心が旺盛」と言っても、A社が考える「好奇心」とB社が考える「好奇心」は、おそらく多少なりとも違いがあるはずである。その違いは、会社の属する業界や事業内容、また、同じような事業内容であっても、それぞれの会社の「企業理念」や「事業方針」、あるいは会社の雰囲気(社風)などから生じてくるものである。
さらに言えば、その「旺盛な好奇心」を仕事でどのように活かしていくのか(営業職として初対面の人と積極的に接していってほしいのか、企画職としてさまざまなアイディアを出してほしいのか…など)によっても、その言葉の中に「好奇心以外の要素」も含まれてくることになるかもしれない。
つまり、先程述べた通り、単に「言葉としての」意味だけ分かっていても不十分であり、その言葉の中にある「その会社の考え・真意」まで読み取って、自分なりにイメージを広げていく必要がある。そして、そのために重要になってくるのが、いわゆる「企業研究」なのである。
そのように考えていくと「業界研究」「企業研究」も、ホームページや採用案内などで公開されている程度の内容を一通り知っているだけ…という程度では、とても「研究をした」というレベルだとは言えないことがお分かりいただけるかと思う。
では、企業に関する情報を深めていくためにはどうしたらよいのか?…いろいろな方法はあるのだが、比較的取り組みやすいものとして、1つは、その会社の「業界内におけるポジショニング(位置づけ)を押さえておくこと」、そしてもう1つは「生の情報を集めること」…まずはこの2点を意識していただきたいと思う。
「その会社の業界におけるポジショニング」については、売上規模や業界内のシェアなどといった基本的な内容だけではなく、取扱品目が多いのか少ないのか、大量生産なのか少量(あるいは受注)生産なのか、商品やサービスの価格帯は高めなのか低めなのか…など、様々な見方があるが、それが見えてくると、同じ「●●業界」といっても、会社による特色の違い、そして特色が違えば「そこで働く人(社員)がどのような働きを求められているか=求める人材像」も、会社によって相当な違いがあるのではないか?…と考えられるはずである。
また「生の情報を集めること」については、それぞれの会社が行う説明会などが、そのような情報収集の最大のチャンスになると思われるが、せっかくの機会であるので、その会社が示していた言葉の真意を、直接的な説明内容などからは勿論、その説明をしている社員の雰囲気や表情など「言葉にはならない」部分まで掴むぐらいの貪欲さがほしいものである。
このようにして、表面的なものだけではなく「深いところ」までその会社や組織に対する理解が進められたら、今度は「自分自身の持っている強み」や「仕事に対する価値観」などが、その会社が求めているものと「どの部分」が「どの程度重なってくる(共通する・同じ方向を向いている)」か…を明らかにしていくことになる。
これをアピールとしてまとめるためには、多少、テクニック的な面も含めていくつかの工夫が必要にはなるが、とにかくまずは内容的にここまで明らかにできるかどうかが、採用側に「志望動機・理由として」受け止めてもらえるか否かの分かれ目になる。そして、実際にはそこまで明らかにして示すことが出来る応募者は多くないのが現実なのである。それだけに、このポイントを理解して自分なりの表現できているかどうかは大きな差になってくる。
また、このような捉え方は、志望動機や理由をまとめるためだけに必要なのではなく、応募を考えているそれぞれの会社の志望の強さを自分自身が把握するためにも重要である。自分自身の価値観と、その会社の価値観の重なりが大きいことが分かれば、元々志望度が高かった会社に対しては、よりはっきりとその会社を志望する理由が明確になるだろうし、最初はそんなに志望度が高くなかった会社でも、そのように確かめていくうちに、実は自分が働くにはこの会社の方が良いのでは…と思えるようになるかもしれない。また、その逆にイメージだけで「この会社で働きたい」と思っていたものの、しっかり見ていくとそれほどでもなかった…と気がつくこともあるかもしれない。
そこまで感じることが出来れば、それは、まさにこの「就活のKEY」を通じて皆さんに実現してほしいと思っている「自分自身とって納得感のある進路選択」「社会人になっても『経験の1つ』として活きてくる就職活動」に繋がってくるのである!
この記事を読んでいただいた皆さんには、どうか、本質をとらえた志望動機・理由を自分の中に見出し、ただ「内定が取れた」云々というだけの話ではなく「自分自身にとって納得感のある進路選択」を実現することを心から願うところである。
◎次回(自己表現編・第4回)は1月26日更新予定となります。
バックナンバー
第11回 | (2015年2月2日掲載 ) | 面接における自己表現② |
第10回 | (2015年1月26日掲載 ) | 面接における自己表現① |
第9回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「志望動機・志望理由」をどうまとめるか |
第8回 | (2015年1月13日掲載 ) | 「自分の強み・長所」をどうまとめるか |
第7回 | (2015年1月5日掲載 ) | 「学生生活で力を入れたこと」をどうまとめるか |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(2) |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 前向きに自己分析を進めていくための切り口(1) |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(3) |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(2) |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動における自己分析とは(1) |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 自己分析をする「意味」について考える |