
就職活動に対する心構え②~
今まで許されてきた「甘え」はもう通用しない
今回は、特に、これから就職活動をしていく方にとっては、時期的には、まだまだ先のことではあるが、実際にあった就職活動に関する相談の事例から話を始めていきたい。
Mさんは応募したいと思っている会社のエントリーシートがうまくまとめられず、私のところへ相談に来た。
応募する会社への提出期限も近づいていたため、私からいくつか自己アピールの切り口を示した上で、それを自分なりの言葉でまとめる課題をだして、3日後に改めて相談…ということになった。
しかし、3日後に相談に来た時、Mさんはその課題に全く手を付けていなかった。なぜできなかったのか確認しようとしたが、Mさんはそれには答えることなく「やろうとは思ったけどできませんでした。提出期限も迫っているので何とかしてください…」ということを繰り返すばかり… その話し方や表情の中には「自分でやらなくても、最後は相談員が何とかしてくれるだろう」という甘さが明らかに感じられた。
ずばり、Mさんのような「甘さ」を持った人は、根本的に意識を変えていかないと、おそらく就職活動で苦労するだけではなく、社会人になってから、もっと辛い状況になってしまう可能性も高い。
「相談・アドバイスをどう活かすか」については、次回のテーマとして改めて取り扱うが、まず、はっきり言えることは、相談やアドバイスをくれる人は「あなたの代わり」になってくれるわけではないということである。身近に頼りになる存在がいることは良いことなのだろうが、それに依存してしまっている人、また依存することが当たり前だと思っている人は非常に問題である。その意識が変わらない限り、本当の意味で「自立した社会人」にはなれないだろう。もっとも、それ以前に、就職活動の中で「その甘えの意識」を見抜かれて、就職自体が決まらないという可能性が高いだろう。
例えばこのケースのように「期限を守る」ということについて言えば、「やろうと思ったけどできませんでした」「頑張ってみましたが無理でした」などというのは、おそらく、社会では全く通用しない言葉である。厳しいようだが、頑張ったという「気持ち」をいくら示されても、求められている結果や成果が無ければ「何もしていない」のと同じであり、結果や成果が伴って初めて頑張ったと認められるのが一般的な社会の見方である。これは、このケースに限らず、全てのことに当てはまると言ってもよいだろう。
ただ、誤解の無いように言っておくが「頑張ろう」という気持ちを持つことが無意味だということではない。ただ、あくまでそのような「頑張ろう」という気持ちや実際の頑張りは「結果が伴うことで(あるいは、今すぐに結果が出なくても、将来的に何らかの成果につながりそうな期待が感じられることで)」それなりの意味を持ち、評価をされるものであって、ただ「成果は何もありませんが、自分なりに頑張ったから、その頑張りを認めてください」というのは、今まではそれで通用していたかもしれないが、社会では通用しないということである。
また「今はまだ学生だから、社会人と同じようにはできなくてもしょうがない…」というような意識や考え方も、少なくとも就職活動においては通用しないと思ったほうが良いだろう。人材を採用するにあたって採用側は「応募者がこの会社に合いそうかどうか」を重要な判断基準にしているのだが、その前の段階として「その人が社会人(この会社の一員)としてやっていけるかどうか」を見極めようとしている。それは能力的なことだけではなく、考え方や意識に関わることも含めて…である。
そのような視点で応募者を見ると、やらなければならないことは出来ていない、そのくせ「自己弁護だけは一人前」という人物は、はっきり言って扱いにくいのだ。そんな扱いにくい人物を、誰が仕事の仲間にしたいと思うだろうか?…確かに就職活動の時点ではまだ学生ではあるから、現役の社会人と全く同じまでは求めないにせよ、少なくとも、社会人になった時にそのあたりの意識をきちんと持って仕事に取り組めるような人を仲間にしたいというのは、採用側からしたら当然のことである。
これを、皆さんの立場から言い換えれば、今までは自分自身が甘くても、周りの人があなたの目線に合わせてくれていたかもしれない…しかし、社会人になったら、周りはそんな「甘いあなた」のレベルに合わせてくれることはない。あなたが周りのレベルに合わせていかなければいけないのだ。もし、あなたがそれを認められないままでいると「あなたと社会との距離」がどんどん広がっていくことになる。そして、その距離があまりに大きくなってしまうと、今度はそれを元に戻したいと思っても非常に多くの時間がかかってしまうことになるのである。(就職や転職に苦労するパターンの1つがこれである)
だからこそ、もし今の自分に「甘さ」を感じるのであれば、この就職活動の準備を「意識を変えていくための良い機会」だと考えよう。また「思っているだけ」なら誰にでもできるわけで、それを行動で示せなければ意味はない…「やると言ったことはきちんとやる」「就職支援行事などに申し込みをしたらきちんと出席をする」「予定や約束していたことにどうしても対応出来なくなってしまったら、相手にきちんと連絡をする」…など、一つ一つの行動にけじめをつけて取り組んでいくことで意識を高めていただきたいと思う。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
特別編・後半 | (2015年4月27日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2) |
特別編・前半 | (2015年4月20日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1) |
第24回 | (2015年4月13日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤ |
第23回 | (2015年4月6日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと④ |
第22回 | (2015年3月30日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと③ |
第21回 | (2015年3月23日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと② |
第20回 | (2015年3月16日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと① |
第19回 | (2015年3月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥ |
第18回 | (2015年3月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤ |
第17回 | (2015年2月23日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④ |
第16回 | (2015年2月16日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③ |
第15回 | (2015年2月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと② |
第14回 | (2015年2月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと① |
第13回 | (2015年1月26日掲載 ) | 「雇用される」ということについて③ |
第12回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「雇用される」ということについて② |
第11回 | (2014年1月13日掲載 ) | 「雇用される」ということについて① |
第10回 | (2015年1月5日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑩ |
第9回 | (2014年12月29日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑨ |
第8回 | (2014年12月22日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑧ |
第7回 | (2014年12月15日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑦ |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動に対する心構え④ |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動に対する心構え③ |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動に対する心構え② |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |