
【第24回】
採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤~
採用選考における採用側の「感覚的」な部分について
いよいよ4月も半ばに差し掛かっているが、筆者が情報収集をしている限りでは、事実上、採用選考が進んでいる企業もかなりあるようである。(あくまで「事実上」だが)採用選考が進んでいるということは、応募する側にとっては、就職活動に対して、ある「思い」が出てくる時期でもある。
…その思いとは、特に、採用選考が思うように通過しない人からよく聞かれることなのだが「不採用という結果になった時に、なぜ、自分がダメだったのか…その理由を知りたい。それが分からないから、どう改善したらよいのか分からなくなってしまう…」というものである。それは、見方を変えれば「もし、その会社の選考基準がはっきり分かれば、なんとかできたかもしれないのに…」という意味合いを含んでいるのではないかと考えられるのだが、そもそも、一口に選考基準といっても、その内容によって「ある程度は明確にできるもの」と「明確にしにくいもの」があるので、今回はその視点から考えていきたい。
まず、採用選考のプロセスの中でも「書類選考」や「筆記試験」などは、その選考基準がかなり明確にできる方だと言えるだろう。(ただし「その基準を公表するかどうか」については、全く別の話であり、また、実際にそれを公表している企業は極めて少数だと思われる)
書類選考は「実際に会って(面接という形で)話を聞いてみたい人か」それとも「どう見ても、時間をかけて会ってみる必要がなさそうな人か」という基本的な判断があり、それに加えて会社としての細かな基準(例えば「特に志望動機の内容を重視する」「応募書類の中に誤字が●個以上あったら内容がどんなに良くても通さない」など…)があるといった場合が多い。
また、筆記試験の場合は「『●点以下の人』あるいは『下位●割の人』は次の選考に進めない」といったように数値的な基準を設けている会社も多い。だから、書類選考が通らないようであれば「自己PRのアピール内容(あるいは、その前の自己分析の掘り下げ方)が不十分」である可能性が高く、筆記試験が通らないようであれば「会社が求めるレベルに対して、自分が身につけている基礎力が不足している」可能性が高い…というように(わざわざ、採用側から具体的に伝えられなくても)その理由がはっきりしているので、まずはその部分の改善に取り組んでいくしかないだろう。
一方「面接」については一概にそのような見方が出来ないところがある。採用決定までに実施する面接の回数も、会社によって様々ではあるが、おそらく、初期段階の面接から最終面接に進むにつれて「その判断基準が、より『不明確』になってくる」という場合が多いのではないかと思われる…いったいどういうとなのだろうか?
例えば、採用決定までに、面接を4回実施する会社があったとして、1次面接は「主任(担当者)級」、2次面接は「課長級」、3次面接は「部長級」、最終面接は「社長・役員級」が面接官だったとしよう。
まだ1次面接・2次面接あたりは「応募者の強みや志望動機などが、会社として求めているものと合っていそうか」といったことや、「身だしなみ」「言葉遣い」などといった、社会人として求められる基本的なマナーなども含めて『会社の求める人材として、最低限クリアしておいてほしい基準』が、ある程度は明確になっており、それを「評価シート」のようなものに記録していく場合が多い。これは、特に複数の社員が面接官役として応募者の評価をするような会社では、面接官の「個人的な感覚」によるブレ(例えば、ある面接官は非常に緩やかな判断をし、別の面接官は非常に厳しい判断をするために、応募者が「どの面接官にあたるか」によって結果が変わってしまう可能性がある…といったようなこと)をできるだけ防ぐという目的もあって、そのような「明確化された基準」を基に評価・判断することが多い。それでも「人が人を評価し判断する」という流れの中では、その評価や判断に、評価者個人の「感覚的」な部分が入ってきてしまうことはどうしても避けられない。
さらに、これが3次面接、さらには最終面接あたりになると、面接官の「感覚」…いわゆる「直感」や「フィーリング」的な要素が、その評価や判断に大きく影響することが多くなってくる。
このような言い方をすると、応募する立場の人の中には「会社の経営者は『自分の好み』で誰を採用するのかを選んでいるのか?」と思う人がいるかもしれない。しかし、それは単純にそういうことではなく、あくまで「応募者が、その会社の『社風』や『企業風土』に合っているかどうかも考慮しながら」見ている…ということである。
おそらく、複数回(特に3~4回以上)の面接を行う場合、その会社で必要とされる能力・特性や志望動機などについては、おそらく、初期~中期段階の面接を通過した時点で、既に会社の求めている基準は超えている…つまり「基本的な評価基準においては『採用できそうなレベルの人物』だと認められている」可能性は高いと思ってもよいだろう。
しかし、その会社の一員として働いてもらうにあたっては、応募者が「その会社の『社風』や『企業風土』(もっとくだけた言い方をすれば「その会社の『ノリ』」)に合いそうな人なのか」…というポイントは、特に、その人を社員として迎え入れたときに「ヤル気(モチベーション)をより高く持って働いてくれるだろうか」「長期間勤めてくれて、将来的には会社の中心人物として会社の成長に貢献してくれそうなのか」などという点から、より会社にとって望ましい人を採用するために、採用する側からすれば、応募者が思っている以上に、非常に重要なポイントの一つとして考えている場合が多いのである。
経営者は、まさに「その会社の『企業風土』を築いてきた人」であろうし、役員と言われる人たちは、その人たち自身が「その会社の『企業風土』に合っている」からこそ、その会社で活躍ができ、その結果として、社内において重要な職責を担っている人たちである…と考えれば『ウチの会社に合いそうな人』を選ぶためには「実際に自分たちの目で応募者を見て、その応募者のことをどう感じるのか?…その中で、自分たちが『この人だ!』と感じた人を選ぶのは、より確実な方法である」ということで、いわゆる『感覚重視』で、応募者(最終候補者)を評価し、採用(予定)者を決定するのは、妥当なことだと言えるだろう。
そして、今回のテーマである「選考基準の明確さ」ということでは、この「その応募者が、ウチの会社の『社風』『企業風土』に合っていそうかどうか」というところが、具体的な言葉や数量的な基準で示すのが非常に難しいところなのである。
もちろん、採用側の多くも「企業理念」や「求める人材像」などといった形で、出来る限り具体的な言葉で応募者に発信しようと努力はしているのだろうが、それでも、それを全ての応募者に完全に理解してもらえるに伝えるのは難しい(というより、はっきり言って不可能)…だと感じているのではないだろうか。やはり、感覚的な要素が強いものを言葉で表現することにはどうしても限界があり、だからこそ「面接」という、直接的にコミュニケーションが出来る機会・場面が重視されるとも言えるのである。
いくらか抽象的な話になってしまったが、このように考えていくと、もし、面接がある程度進んだ段階で、残念ながら「不採用」という結果になってしまった場合についてはもし仮に、採用側から不採用だった理由(自分が、どのようなところがどの程度、採用基準を満たしていなかったのか)を聞くことが出来たとしても、結局のところ、それで自分自身がスッキリできたり、あるいはそれを反省材料として、今後受けていく他の会社の採用選考に活かせる…などといったことは難しいのではないかと思われる。
それだけに、特に最終面接などで残念な結果になった場合などは「決して自分自身がダメだったということではなく、その会社としても採用人員の枠が限られている中で、自分よりも他の応募者の方が(相対的に)その会社の企業風土や雰囲気に(より)合致している…という判断を、その会社の企業風土を最も理解している人たちが判断したんだ」…といった考え方・割り切り方も必要だろう。そして、先に述べたように、最終(に近い)段階まで進んだということは「基本的な部分では『採用に値するレベル』であることは認めてもらえたんだ」と前向きに捉えた上で、今後選考を受けていく会社に対しては、その会社の「社風」「企業風土」などまで意識しながら、さらに深い企業研究を行っていき、自己理解の内容と結び付けていくという、充実した就職活動を実現するために取り組むべきこととして、この「就活のKEY」でも繰り返しお伝えしていることを地道に進めていただきたい。そして、それが出来れば、いずれは「自分にとって、より望ましい・良い会社」に巡り合うことができるに違いないだろう。
◎次回は「特別編・前半」として4月20日(月)の更新予定となります◎
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
特別編・後半 | (2015年4月27日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2) |
特別編・前半 | (2015年4月20日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1) |
第24回 | (2015年4月13日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤ |
第23回 | (2015年4月6日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと④ |
第22回 | (2015年3月30日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと③ |
第21回 | (2015年3月23日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと② |
第20回 | (2015年3月16日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと① |
第19回 | (2015年3月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥ |
第18回 | (2015年3月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤ |
第17回 | (2015年2月23日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④ |
第16回 | (2015年2月16日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③ |
第15回 | (2015年2月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと② |
第14回 | (2015年2月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと① |
第13回 | (2015年1月26日掲載 ) | 「雇用される」ということについて③ |
第12回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「雇用される」ということについて② |
第11回 | (2014年1月13日掲載 ) | 「雇用される」ということについて① |
第10回 | (2015年1月5日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑩ |
第9回 | (2014年12月29日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑨ |
第8回 | (2014年12月22日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑧ |
第7回 | (2014年12月15日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑦ |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動に対する心構え④ |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動に対する心構え③ |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動に対する心構え② |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |