
【第16回】
エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③~
「コミュニケーション力」と「知識量」の関係(前半)
「企業が求める人材像」については、それぞれの企業によって、人物的な側面・能力的な側面などからいくつかの要素があげられる。そして、それらの要素の中でも「特に重視する要素が何なのか」については、企業ごとにそれぞれの考え方があるのだが、その中でも「コミュニケーション力」については、各種の調査などで「採用選考にあたって最も重視するもの」の第1位に毎年挙げられることからも、おそらく、ほとんどの企業で「重要な要素」として位置付けられているものと思われる…とは言え、一口に「コミュニケーション力」と言っても、これまた、いろいろな側面や解釈の仕方があるために、その「捉え方」が難しい。そこで、コミュニケーション力について考えていく際に(いわゆる「就職情報サイト」といわれるところでは)あまり取り上げられることがない「『知識量』と『コミュニケーション力』の関係・関連」について、今回と次回の2回にわたって触れていきたいと思う。
まず前提として、この話の中で触れていく『知識(量)』というのは、主に「『一般常識』として扱われるような幅広い分野に関する全般的な知識」のことであり、『コミュニケーション力』とは、主に「他者と関わっていく力、さらには、他者と深い関係性(協力関係や信頼感など)を築いていくことが出来るための力(能力)」と捉えていることを踏まえていただきながら、以下の内容をご覧いただきたい。
「知識の必要性・重要性」というと、特に就職活動においては「筆記試験で出てくる問題に正解できるだけの知識を身につけておかなければ…」といったように、とかく、その目的を限定的に捉えてしまいがちであるが、実際にはそれだけではなく、採用選考における面接の場面であったり、さらに社会人になってから日々遭遇する様々な場面の中でも「その人が身につけている知識量が多いか少ないによって、その場面で発揮されるコミュニケーション力にも差が出てくる」ということが言える。
特に、社会人経験の無い皆さんにとっては「いきなりそんなことを言われても・・・」と思われるかもしれないが、さらに続ければ「知識量が多い」ということは「世の中で日々発信されている情報に対する『感度』が高くなる」ということにつながり、さらにそれは「会話やプレゼンテーションなど『社会人として』円滑なコミュニケーションを図っていくことが求められる場面でも自信をもって対応することが出来る」ことにもつながってくるのである。一体、どういうことなのか?…順を追って考えてみよう。
人の基本的な性質の一つとして「知らないものごとには興味・関心を持ちようがない」ということがよく言われるが、確かにその通りだと思われる。では、「知識として」その言葉の意味を知っているか知らないのかによって、そこから興味・関心にどうつながっていくのか、さらにはコミュニケーションの場面でどういうことになるのか・・・また、かなり理屈っぽい話になってしまうが、以下の例から考えてみていただきたい。
例えば、今やテレビをはじめとする様々な情報媒体から、日常的に見聞きする「AKB48」というアイドル(グループ)を表す言葉がある。もし、皆さんが、友達などとの会話の途中で、「そういえば『AKB48』がさあ…」と、いきなりその言葉を出されても、何らかのイメージを持ち、多少なりとも何らかの会話ができる人が、おそらくほとんどなのではないだろうか。
なぜか?…これは言うまでもなく「『AKB48』というものが何なのか」を、おそらく、日本で生活しているほとんどの人たちに「知識」として身についているからである。…ということは、例えば、日本のエンターテイメント情報などが伝わらない地域に住む人や、そのような情報に全く興味が無い人たちにとっては、この「AKB48」という言葉を聞いても、それは「アルファベットと数字が並んでいるだけの5文字のかたまり」でしかない。そして、そのような状態から、いきなり何か会話をしようと思っても何も話しようがない…ということになるだろう。では、もし、このような人が「AKB48」について、何らかの会話ができるようになるためにはどうしたらよいのか?…おそらく、まずは「『AKB48』についての基本的な知識を身につける」ことなのではないだろうか。
もちろん、先に言葉を「知識」として身につけていなくても「(知識として身につけようと特に意識しなくても)日々の生活の中で、無意識のうちに情報が目や耳に入ってきているうちに、その言葉が自然に知識となって、興味・関心も深まっていった」という場合もあるだろう。実際、知識が増えていくきっかけ・過程としては、そのような場合が圧倒的に多いのではないだろうか。(まさに、先程取り上げた「AKB48」などは、先に言葉の意味を知識として身につけた…なんて人はほとんどいないだろう)
そのような知識の増やし方でも、知識が増えるということであれば、それはプラスにはなるのだろうが、特に注意したいのは、そのような知識の増やし方だと、知識の増え方が、どうしても「自分自身の興味や関心が持てる範囲」に限られてくる場合が多いということである。つまり、『社会人としてのコミュニケーション力』ということで求められる「世の中にある、また日々起こっている物事や情報に対して『幅広く』理解を深める」というようにはなりにくいということである。
「自分の興味・関心のあることならいくらでも話が出来るが、そうでないことは全くついていけない」・・・これでは『社会人のコミュニケーション』としては不十分であるし「(社会人として望まれる)情報に対する感度」が高いとは言えない。様々な世代・考え方の人が集まって成り立っている世の中(あるいは会社組織)で求められる『社会人としてのコミュニケーション力』とは、言ってみれば「様々なタイプの人との会話に『ついていくことができる』力」なのである。(もちろん、これが「全て」ではなく、あくまで「基本的な要素の中の一つ」ということではあるが…それでも、非常に重要な要素であることは間違いない)
そうなると、自分自身が、自然と興味・関心を持てないことに、興味・関心を持って行くためには、まずは、その「言葉に対する知識」を持つこと・・・つまり「知っている言葉の数」を増やしていくことが必要だということになる。
「とにかくいろいろな言葉の意味を知っていればそれでOK」という単純な話でもないのだが、少なくとも、言葉を数多く知っている方が、それらの言葉を「情報」として見聞きした時に、それをそのまま受け流してしまうのではなく「自分の意識に引っかかってくる」可能性は高くなるし、自分自身に引っかかってくる言葉が多ければ、それだけ「その言葉に関連する情報」にも興味・関心が向く可能性が高くなってくる。そして、そのよう情報の中に、自分自身にとって非常に有効・有益な情報が含まれていることに気がつくことができるかもしれない・・・つまり、この「自分自身への『引っかかり』」が多くなることが、つまりは「情報に対する感度が高くなる」ということにもなるのである。
それだけに、先ほどから述べている通り「『社会人としてのコミュニケーション力』を高めていくための知識」という視点で考えると、やはり、ある程度「浅く広く」知識を持っておくことが求められる。それだけに、コミュニケーション力に自信が持てない人は、あまり難しく考えずに、まずはとにかく「知っている言葉の数を増やしていく」に取り組んでみてはいかがだろうか。
持っている知識や情報が増え、その幅が広がっていくことは、自分自身の「物事に対する見方(視野)」の広がりにもつながってくる。視野が広がってくることで、その視野に入ってくる情報量も相乗的に増えていくことはもちろんのこと、その情報に関わっている「人」にも意識が向いてくるようになる。そして、そのような人たちとの関わりを通して、自分自身のコミュニケーションの幅も広がり、さらには「自信」につながってくるのが理想的である。
では、幅広い知識を持つことで、対人コミュニケ―ションの「自信」にどうつながっていくのか…これについては、次回に考えていきたいと思う。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
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第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
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第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |