
【第5回】
就職活動に対する心構え⑤~
「やりたいことが無い・分からない」という言葉について(1)
「自分がやりたいことが無い」「将来やりたいことが分からない…」というのは、相談を受けていてもよく聞かれる言葉の1つであるが、これは大きく「2つの側面」で捉えることができるだろう。一つは「自分自身が自立して生きていく」ことへの意識が十分にできていないために出てくる「無い・分からない」であり、もう一つは「職業選択をしていく上で、自分がどのような仕事や会社を選んだらよいのか分からない」ことから出てくる「無い・分からない」である。
それに対して「どう考えていくべきか」については、前者と後者で大きく変わってくる。ただ「『考える』という作業が出来ていない、もしくは不十分である」ということが根本的な原因になっていることについては大きな違いはないだろう…それを踏まえて、今回は「自分自身が自立して生きていく」ことへの意識が足りないことから出てくる「無い・分からない」について考えてみることにしたい。
「自立」という言葉もいろいろな側面があるが「働くこと」と関連づけて考えていくと、自分で働いて得た給与や報酬で自分自身が、また家族があれば家族を含めて日々の生活を送っていくことができるという「経済的自立」が最も大きな側面になってくるだろう。
この記事を読んでいただいている方の中でも、人それぞれ置かれている細かい現状は異なるかとは思われるが、大きな傾向としては、ほとんどの人が保護者の扶養に入っている、そして、程度の差こそあれ、経済的にもそれ以外の面でも、その保護者の保護を受けながら日々の生活を送っていることだろう。勿論、それは「自立」ができている状態ではないのが、だからと言って、何も「とにかく早く、それこそ明日からでも自立をしなければダメ」だということではない。
ただ「保護を受けながら生きていくということが、この先、いつまでも続けられるわけではない」ことについては、今日からでもしっかり意識をしておくべきだろう…ある程度、予見ができることに対してそれなりの準備をしておくことは決して無駄なことではない。
おそらく、ごく一部の経済的に恵まれた環境にある人を除けば、自分だけが「生涯、何らかの保護を受け続けていられる」ということはあり得ないことである。(すぐにでも自立がしたいと思っていても、自分だけでは解決できない理由や事情で、それが実現できない人もいる中で)その気になれば自立していけるはずなのに、いつまでたっても自立する気持ちが無い人まで面倒を見続けられるほどの余裕など今の社会に無いことは、国の財政赤字が年々深刻になっていることからも明らかであろう。
しかし、その現実を受け入れようとせず「自分自身で何とかしなくても、きっと誰かが何とかしてくれるだろう」…といった、いわゆる「砂上の楼閣」のような独りよがりな期待の上に「自立」するということから目を背け、それを「やりたいことが無い」という言葉でごまかしているのだとしたら、これははっきり言って「自分自身への甘え」以外の何物でもない。繰り返しになるが、そのような甘い人を、社会の仕組みで面倒がみられるほど、今の社会には余裕もないし、まさに「世の中は甘くはない」のだ。
また、「自分のやりたいことがどこかにあるはずなのに、それがなかなか見つからないのでやりたいことが分からない」という人もいるが、本当の意味でやりたいことというのは、まるで「いきなり何かの宝物を発見するように」に見つかるようなものではなく、毎日の自分自身の経験や学びの中で、だんだんと自分の中で理解をしていくものではないのだろうか。
…であるとすると、大切なのは「毎日の時間の過ごし方」と、その中で得られる「『自分自身の気づき』に対する意識の持ち方」になってくる。人は基本的に誰もが1日24時間の時間を与えられている。その中で、どれだけ有意義な経験や学びに時間をかけられるのか…もし、何も考えず、あるいは何となくぼんやりと考えているだけで時間だけが過ぎていると感じているようであれば、まずは、自分の身近にある真剣に取り組めていないこと(大学の授業、社会活動、アルバイト…など)に、今一度、真剣に取り組んでみることから始めてみるべきだろう。
意識の持ち方はそう簡単に変えられるものではないが、しかし、少なくとも「変えようとする気持ちと行動」がなければ、結局、いつまで経っても変えることは出来ない。これこそ、誰かが何とかしてくれることではなく、自分自身で自分を変えていかなければ出来ないことである。まずは「自分を変えられるのは自分だけ」ということを意識しながら、自分自身で考え、自らの意志で何らかの行動を起こしてみるという「前に進んでいくための第一歩」をとにかく踏み出してみることが「自分のやりたいこと」に気がつくための第一歩だと思っていただきたい。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
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