
【特別編・前半】
一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1)
新年度も早いものでもう3週間経ち、もうすぐゴールデンウィーク…というこの時期、特に今年度は「採用に関する広報活動の開始時期」が3月へ後ろ倒しとなったことによって、どのような変化が起こるのか、なかなか不透明なところがあったのだが、結局のところ(あくまで会社によって…ではあるが)事実上の採用選考がかなり進んでいる会社もあり、さらには「内々定」というニュアンスで話をされているような人も出てきているようである。
そのような状況についての是非をここで触れることはしないが、実際にそのような動きが出ているという状況を踏まえて考えていくと、既に「採用選考が順調に進んでいる人」がいれば、その一方で「思うように採用選考を進むことが出来ずに、いろいろと焦りを感じ始めている」応募者も出てきているということだろう…もし今の時点で、あなたが『焦りを感じ始めている』方の人であったとしたら、ただ、やみくもに動き続けるのではなく、このタイミングで一度、今までの自分自身の就職活動について冷静に振り返って反省すべき点は反省し、それを、今後の活動に活かしていく…ということをおススメしたい。今なら、まだまだ十分すぎるぐらいに時間はある。
今回と次回は、この『就活クリニック』でお伝えしてきた内容の、いわば「振り返り」的な感じになるが、5つの切り口から「はたして、今までの自分自身がどうだったのか」について考えてみていただきたい…では、今回は「根本的」な要素に関して、2つの切り口について考えていくことにする。
① 「自分自身への甘さ」や「周りへの過度な依存」はなかったか?
今年度の採用状況については、前年度に比べてもさらに採用人数を増やす予定の企業が目立ち、応募者の側にとっては「非常に有利な環境」だと言われてはいるが、だからと言って、それがそのまま「応募者の誰にとっても採用選考のハードルが下がる」という単純な話でもない…ということはきちんと意識をしておきたい。
近年では「採用予定人数に満たなくても、採用したい人材がいなければ「ただ単に頭数を合わせるために』無理には採用しない」という傾向も強くなっており、やはり、今年度も引き続きそのような印象を受ける。つまり、単純に「全ての人にとって」就職活動が楽になったわけでは無く、あくまで「きちんとした意識を持ち、必要な準備をきちんとした上で就職活動を進められている人」にとっては、雇用環境が厳しい時代に比べれば、明らかに多くのチャンスがある(より多くの選択肢の中から選べる)ということなのである。
近年「学生の二極化」ということが採用現場ではよく言われているが、これは「採用したい学生はどの企業でも採用したいから内定を出し、そうでない学生はどの企業でも採用しない」…つまり、内定をもらえる人は何社からも内定を得られ、そうでない人1社から内定を得ることすら非常に難しい…この差が、応募者ごとに明確になってきているということである。
このような差が出てくる要因としては「自己理解の程度」「業界・企業への理解の程度」「身についている基礎能力の程度」など、具体的なポイントもいろいろと考えられるのだが、何より根本的なポイントとして「これから(あと1年もすれば)社会人になっていく」ということに対して、それだけ前向きな意識と意欲が持てているのか?…という点が非常に重要なのではないだろうか。もちろん、今の時期から現役社会人と全く同じような意識を持つべきだ…などと言うつもりは全くないが、だからといって(言葉は悪いが)学生という立場にどっぷり浸かった「甘さ丸出し」の意識・態度が採用側にもはっきり見えてしまうようでは「この人を採用しても、入社後の指導・教育が大変なのは間違いないだろう…だったら最初から採用しない」ということになってしまう可能性は高い。
採用する側にとってみれば、採用の内定を出すのは「『今は』学生の立場」であるあなたに対してであるが、あくまで、正式に会社の一員になったその瞬間から、きちんと「社会人」としての行動をしてもらうということを前提にしているのだ。そのような採用する側の認識を理解できずに「(本当に)きちんとするのは実際に社会人になってからでも十分でしょ…」などと考えていると、自分では全く気にしていないようなちょっとした言動から、どこかで採用側に見透かされている場合は、皆さんが思っている以上に非常に多い。
また、今までは家族や学校の先生、就職活動でいえば、就職支援をしてくれる人たちなど、様々な人が様々な形でサポートしてくれていただろうが、社会人になったらなかなかそうはいかない。もしかしたら、家族はまだまだ甘やかしてくれるかもしれないが(しかし、それも自立を妨げることになるので、結局、本人にとっては望ましいことではない…)少なくともそれ以外の「他人」は、『いつまでも』『あなたにばかり』目をかけ、手をかけ…などとしてはいられない。そのような人には『あなた以外』にも目をかけ、手をかけなければいけない人がいっぱいいるのだから…
そのような「社会の現実」に目をそむけ、「別に自分が何とかしなくても、困った時には誰かが何とかしてくれるだろう」といった甘い意識があったとしたら、今のうちにその意識を改めていかないと、おそらく「社会人として」社会に受け入れられることも難しいだろう。
② 就職活動に「参加していること」に満足をしていたところはないか?
この3月も、まるで「年中行事の一つ」のようなノリ(これも毎年「相変わらず」といった感じだ…)で、イベント系の会社説明会の様子がニュースなどでも紹介されていたが、そのような会社説明会や採用選考の予定を入れて、日々忙しく動き回っていること…そのこと自体に、またそんな「忙しい」自分自身に満足してしまっていたところはないだろうか?
そもそも、求人に応募して採用選考に臨むというのは、あくまで「自分自身の進路を決めていくための過程」であるはずである。自分自身の進路を決めるにあたっては、自分なりにしっかり考える時間も必要だし、それを踏まえて応募するのでれば、自分なりに万全の状態で臨むために必要な準備もあるだろう。つまり、応募する1社1社に対してもっとしっかり準備をする時間をかけるべきなのに、そうではなく、ただやみくもに応募「社数」ばかり増やしていくと、1社に対してかけられる準備の時間が少なくなって、どの会社に対しても不十分な状態で選考に臨むことになるだけではなく、だんだんと「採用選考を『こなすこと』が目的」になってしまいかねない。そしてその結果、どの会社からも望むべき評価が得られなかったとしたら、それこそ「時間の無駄遣い」以外の何物でもない。
誤解の無いように強調しておくが「だから(単純に)応募社数を絞り込んだ方が良い」ということを言いたいのではない。確かに、まずはその会社に対してアプローチ(応募)をしていかなければ、その会社で採用される可能性はゼロであるし、いくつかの会社の採用選考が並行して進んでいくことで「自分自身の目や耳で得た情報」から応募先の会社を比較することができ、そこから自分自身の就職に対する考え方や価値観についての「新たな気付き」も出てくることも多いので、応募する社数が多いか少ないかについて一概に賛否を述べるつもりはない。
ただ、ここで自分自身に強く問いかけてもらいたいのは、応募先の会社に対して「自分の●●という特性を発揮して、この会社で活躍したい」「この会社で頑張っていくことで、会社にも貢献ができ、且つ、自分自身の社会人(職業人)としての生活も充実させていきたい」…など、自分なりの『前向きな意思』を持って、その会社の採用選考に臨んできたのか?…ということである。そのような意思が全くなく「とにかく数撃てばどこかの会社から『内定』がもらえるだろう」といったような意識で応募をしているようでは、それは、まさに「応募することが目的」になってしまった応募であり、まさに「単なる応募の『ムダ打ち』」である。
もっとも、これについても、早い時期に、自分が「ムダ打ち」的なエントリーをしていたことに気付き、それを反省することで意識の修正が出来れば、就職活動を通じて得られた一つの「学び」にもなり得るが、いつまで経ってもそれに気が付くことができなかったら(あるいは気が付こうとしなければ)、採用する側からは「就職活動を一生懸命頑張っている『つもり』だけど、大事なことが何も分かっていない人」という見方・評価をされてしまうことだろう。
もし、自分がこのようなケースに当てはまる…と思われたのであれば、今一度、就職活動は「活動することそのもの」に意味があるのではなく、「自分の進路を選んでいくための活動」という前提で「今までの自分は何が出来ていなかったのか」そして「それを出来るようにするために、これからどのように時間を使うのか」を今一度考え直してみよう。繰り返しになるが、それだけの時間・チャンスは、本当にまだまだ十分すぎるぐらいにあるので、とにかく「これから」の時間を前向きなものにしていくことで、充実した就職活動を実現していただきたい
では、次回は就職活動の「具体的なプロセス(ステップ)」の中で挙げられるいくつかの点について考えていくことにする。
◎「後編」は4月27日更新予定となります
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
特別編・後半 | (2015年4月27日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2) |
特別編・前半 | (2015年4月20日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1) |
第24回 | (2015年4月13日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤ |
第23回 | (2015年4月6日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと④ |
第22回 | (2015年3月30日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと③ |
第21回 | (2015年3月23日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと② |
第20回 | (2015年3月16日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと① |
第19回 | (2015年3月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥ |
第18回 | (2015年3月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤ |
第17回 | (2015年2月23日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④ |
第16回 | (2015年2月16日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③ |
第15回 | (2015年2月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと② |
第14回 | (2015年2月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと① |
第13回 | (2015年1月26日掲載 ) | 「雇用される」ということについて③ |
第12回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「雇用される」ということについて② |
第11回 | (2014年1月13日掲載 ) | 「雇用される」ということについて① |
第10回 | (2015年1月5日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑩ |
第9回 | (2014年12月29日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑨ |
第8回 | (2014年12月22日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑧ |
第7回 | (2014年12月15日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑦ |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動に対する心構え④ |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動に対する心構え③ |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動に対する心構え② |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |