
【第14回】
エントリー・採用選考に向けて意識したいこと①~
就活は「数撃てば当たる」ものなのか?
2015年も約1カ月が経ち、新卒での採用を目指す皆さん(大学3年生・短大1年生など)にとっては、学年末試験を無事に乗り越えられたら、いよいよ就職活動中心の日々になってくる(と思われる)時期になってきた。志望する企業の採用選考に乗っていくための最初のステップは「その企業にエントリーをする」ことであるが、実際にエントリーをしていくにあたって、まずは意識をしておきたいことについて、今回から4回(ちょうど、この2月の4週間になるが…)にわたってお伝えしていきたいと思う。「広報活動の解禁」=「事実上の就職活動のスタート」を迎える3月1日を前に、これらのことをきちんと理解しておくことによって、就職活動が慌ただしくなってきても、ぜひ「本質を見失わない」就職活動を実現していただきたい。
では、まず今回は、エントリーをしていく会社の「数」について考えていくことにする。
「今年度の新卒学生の平均応募企業社数は●●社…」とか、「内定を得るためには最低●●社はエントリーしておいた方がよい…」などといった類の話が毎年のように出てくるのだが、このように「エントリーする会社の数が多い方が良いのか少なくても良いのか…」と「数の多少『のみ』」で、その良し悪しを考えるのは、あまり意味のないことである。
極端な例えではあるが、仮に「1社」しかエントリーしなかったとしても、その会社が「自分が働くにあたって最も理想的な会社」だと確信してエントリーをし、会社(採用側)の方も「その人が当社の求める人材に合致している」と判断して「採用」ということになれば、その人にとっては、結果的に「自分自身が『納得感の持てる』進路選択」が出来たわけであるから「エントリーしたのは1社だけだったけれども、良い就職活動ができた」ということになる。
つまり、この就活クリニックを含め「就活のKEY」で繰り返しお伝えしている就職活動の本来の目的…「自分自身が『納得感の持てる』進路選択」を実現するための活動が就職活動である…という視点から考えれば、「何社ぐらいエントリーするのが良いのか?」といった、単純に『数』に対する疑問に対しては、答えの出しようが無いのである。
しかし、だからと言って「何社ぐらいにエントリーをするのか」について、全く何も考える必要が無いかと言えばそうでない。その中でも、まずは意識をしていただきたいのは「とにかく応募しないことには始まらないから…」という考え方で「とにかく手当たり次第にいろいろな企業にエントリーをする」というやり方では「行動は起こしてみたが、その行動に対して、結局、何の成果も得られなかった…」ということになってしまう可能性が高い…ということである。
「世の中、好景気で『就職環境は良い』…とは言われている中で、何百社と応募したけれども、全く内定が得られないまま時間が過ぎ、いよいよ卒業も間近になってしまって非常に焦っている」というような4年生(短大2年生)の学生の様子が、この時期になると、毎年どこかで「社会ネタ」の一つとして、テレビや新聞などで取り上げられるものである。おそらく今年も、そのような学生の日常に密着してその学生の日々の苦労・苦悩を映し出している(と視聴者に感じさせるような)ものが、どこかで取り上げられるのではないだろうか。
それを「1つの情報」としてどのように受け止めるかについては人それぞれではあるが、少なくとも、就職支援の現場に日々関わっている立場からそのような状況に陥っている人を見た時に「そこまで就職活動を一生懸命『頑張って』いるのにそれが報われないなんて、この学生は気の毒だ…」とか「こんなに就職活動を『頑張って』いるのだから、採用する側も、その学生の『頑張り』を認めてあげたらいいのに…」とは、どうしても思えないのである。
これもよく言われることの一つではあるが「採用する側は『奉仕活動』で人を雇うわけではなく、特に新卒採用では、将来的に『この会社の戦力』になってくれる可能性を感じられる人を雇いたい…という明確な『目的』の下に採用活動をしている」のであって、もし仮に「とにかく誰でも良いから…」とその『目的』に沿わないような人ばかりを採用しているようでは、その採用担当者自身が、会社から「会社として求めている働きをしていない」=「働きの悪い、いわゆる『使えない』人」と評価されてしまうに違いない。
つまり、その会社にとって、明らかに「求めている人材像」とは違うのに、もし「就職活動を一生懸命頑張っているから」という理由だけで「採用する枠があるのなら、会社もその学生を採用してあげればいいのに…」などと言う人は、採用活動の根本的な目的が全く分かっていないのだろう。
非常に厳しいことを言うようだが、もし、何十社・何百社とエントリーして、必死に就職活動をしている(…と本人は思っている)のに、それが全く(採用という)結果に至らないという場合はほぼ間違いなく(敢えて「100%」とまでは言わないが…)「就職に対する考え方、もしくは就職活動の進め方について、その人自身に、何かしら『見直し・改善をしなければならないところ』がある」から結果につながってこないのである。
それを踏まえて、これから就職活動をしていく皆さんがそのようになってしまわないために、エントリーのタイミングで意識をしていただきたいのは、いわゆる「数撃てば当たる」的な発想…つまり「とにかく手当たり次第に応募をすれば、いつかはどこかに決まるだろう」…という考えではなく、エントリーの前に「その会社は、本当にエントリーするべき会社なのか?」について、自分自身で「検討」「吟味」をしてから、エントリーという行動に移していただきたいということである。
前回のテーマで取り扱ったが、自分自身の進路の可能性・選択肢を多く持つという意味では「志望先に幅を持たせる」ことは非常に大切なのだが、それは「エントリーできる会社であれば、まずはとにかく『なんでもかんでも』エントリーをしてみる」ということとは明らかに意味が違う。また厳しい言い方になってしまうが、自分自身の「検討」「吟味」が全くなく、手当たり次第にエントリーをするということは「私は自己分析・会社研究が全くできていないので、自分が本当に働きたいと思える仕事や会社が分かっていません…」と自分で認めてしまっているようなものである。
先回お伝えした通り「志望業界に幅を持つ」ということは、自分の強み・長所や、働くにあたっての興味・関心など「自分自身への理解」と「興味ある業界や会社に対する理解(いわゆる「企業研究」)」を深めていく中で、進路の方向・選択肢を一つ(あるいはごく少数)に限定しまうのではなく「いくつかの方向・選択肢を可能性として持っておく」ことである。そうしておくことで、就職活動で得られる経験の中で「新たに知ることができたこと」や「自分なりに気が付いたこと」なども出てくる…そして、そのような経験に基づいた「知識」や「気づき」が積み重なっていくことで、時には進路先の志望順位が変わってきたり、新たな進路を発見したりしていきながら、だんだんと自分にとって「より納得感が高く感じられそうな進路」を絞り込んでいくことができるのである。
ところが、そのプロセスを面倒だと感じて、とにかく「数をこなせば、自然にどこかにたどりつくだろう」という発想で就職活動を進めていくと、いつの間にか「エントリーをする」という『行為そのもの』が目的になってしまう可能性が高い…それでも、まだ最初のうちは「就職活動を一生懸命やっているような気分」にもなれるので、そんなに気にもならないのだろうが、次第に各社の採用選考が本格化し、就職活動のスケジュールがタイトになってくると、エントリーのために必要な応募書類(エントリーシートや履歴書)の作成一つとっても、時間の確保が難しくなってくる…そうなると(本人は気が付いていない場合が多いのだが)時間がかけられない分だけ、書類1枚1枚の「質」はどうしても低下しまうために、だんだん書類選考も思うように通らなくなってくる…そうしているうちに、気が付いたら「『持ち駒』が減ってきている…」などと焦って、また新たなエントリー先を探して…となってしまうパターンは意外に多い。
まさにこれこそが『悪循環』というものである…前述のように、就職活動を通じて自分自身の進路を明確にしていくことが出来れば、その活動は非常に有意義であり、自然と自分自身の成長にもつながってくるものなのだが、その目的から外れた「やみくもなエントリー社数増やし」は、まさに「やみくもに時間を費やしている」だけであって、自分とって「より望ましい進路」を見つけ出すことにはになかなか結び付いていかないのである。
くどいようだが、単純に「数」の話をしているわけではないので「『数撃てば当たる』という考え方がダメ」=「応募数をほどほどに絞り込むのが良い」ということではない。肝心なことは、もし「『自己理解』と『業界研究』が、まだまだできていないと感じるのであれば、エントリーが本格化してくる前に、そこにしっかりと時間をかけてほしい」…ということなのである。
そうすることで、実際にエントリーする会社の数がいくらか少なくなってしまったとしても、その分、一つ一つの応募先に対しては「自分はこの会社でこのように頑張っていきたい」ということを採用担当者にしっかり伝えられるように、時間をかけてアピール内容をまとめていくことができるだろうし、そうすることで、おそらく「望ましい結果」を得られる可能性が高くなるだろう。それだけに、エントリーが本格化する前のこの時期に、ぜひ今一度「『自己理解』と『企業研究』の進み具合」について、自分なりにきちんと把握しておいていただきたいものである。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
特別編・後半 | (2015年4月27日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2) |
特別編・前半 | (2015年4月20日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1) |
第24回 | (2015年4月13日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤ |
第23回 | (2015年4月6日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと④ |
第22回 | (2015年3月30日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと③ |
第21回 | (2015年3月23日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと② |
第20回 | (2015年3月16日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと① |
第19回 | (2015年3月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥ |
第18回 | (2015年3月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤ |
第17回 | (2015年2月23日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④ |
第16回 | (2015年2月16日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③ |
第15回 | (2015年2月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと② |
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第13回 | (2015年1月26日掲載 ) | 「雇用される」ということについて③ |
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第11回 | (2014年1月13日掲載 ) | 「雇用される」ということについて① |
第10回 | (2015年1月5日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑩ |
第9回 | (2014年12月29日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑨ |
第8回 | (2014年12月22日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑧ |
第7回 | (2014年12月15日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑦ |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動に対する心構え④ |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動に対する心構え③ |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動に対する心構え② |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |