
【第15回】
エントリー・採用選考に向けて意識したいこと②~
「合同会社説明会」に出かけるにあたって
エントリー先を見つけていくための手段として「会社説明会への参加」というのは重要なものであると考えている人は多いだろう。そこで、今回と次回の2回は、この「会社説明会」への向き合い方にについて考えてみたい。
特に近年、大学の学内で実施される説明会の増加も含め、そのスタイルも多様化しているが、どのような形であれ、あくまで説明会に参加する目的というのは「それぞれの会社の『生きた情報』を得る」ということであろう。ところが、その目的をきちんと理解していないのでは…と思われる人が毎年多くみられる。今回は、その中でも、いわゆる「就職情報会社」などが主催する合同会社説明会に「参加」することの意味について考えてみたい。
特に、2016年度卒業の新卒採用に関しては「企業の広報活動開始時期の後ろ倒し」により、3月1日から、各地で各情報会社の合同会社説明会が集中的に開催されることが予想されるが、いざ、開始となれば、昨年度までと変わらないような光景が見られる可能性が非常に高い。
それは、どのような光景なのか?…大規模な会場に、何千人、場合によっては1万人を超えるほどの学生が集まるため「会場に入場するのも●分待ち」だったり、その会場の周辺や公共交通機関の駅周辺は、その情報会社の名前が書かれた袋を持ったリクルートスーツの大量の学生でいっぱい…といったような具合である。その光景はある種の「イベント」感に満ち溢れているが、傍から見れば、同じような格好をした人が集団になっている様子は「ちょっとした怖さ」さえ感じるかもしれないほどである。
まあ、それはともかくとして、そのような「イベント色の強い」会社説明会について、そこに足を運ぶ学生も、基本的には「自分の意思」で参加しているのであろうから、それが良いのかどうかを申し上げるつもりはない。しかし、そのような会社説明会に参加してきたであろう学生の姿を目撃したり、実際の学生の声を聞いていると、このような説明会に「貴重な時間を費やして参加することの意味」を自分なりにきちんと認識出来ているのだろうか…と心配になってしまうケースが多いのである。
では、そのような中から「これではせっかく『時間』と『労力』(+会場までの交通費)をかけたのに、あまり意味が無いかもね…」と思われるケースを、以下に3つほどあげてみたい。
1)そこに足を運んだだけで「就職活動をした」という気になってしまっている
今までに見たことない大人数の、しかもリクルートスーツ姿の学生と、企業の各ブースからは、今までの学生生活の経験の中で感じた緊張感とはちょっと違った緊張感が漂ってくる…そのような状態を今まで体感する機会も無かっただけに、その空気に触れることによって「これからいよいよ就職活動を始めていくんだ…」といった、いい意味での刺激を受けられるということでは、このような説明会に参加する意味はあるかもしれない。しかし「刺激を受けた」=「就職活動をした」わけではない。「どこからが…」と厳密に定義づけるのは難しいところではあるが、おそらく本当の意味での「就職活動」というのは、応募書類の提出など「その会社の採用選考にのっていく」ところから始まる、と考えるべきである。
ところが、このようなイベント的な会社説明会で人混みに揉まれ、多少の疲れを感じた程度で「今日の自分は『就職活動』を頑張った」と思っている人が見受けられる。これは、筆者が実際に出くわした場面なのだが、あるターミナル駅で、大手情報会社のマークが入った袋を持った男子学生のグループから「やれやれ『一仕事』終わった。今日のビールはうまいよな~」という声が聞こえてきた…言っていることは、いかにも一人前の社会人っぽい感じなのだが、この程度で『一仕事』なんて言っているようでは、実際に就職活動を始めたら、さらに実際に社会人として働き始めたら「どれだけビールがあっても足りないだろう?」…と、つい、心の中で突っ込んでしまった。
もし、「刺激を受ける」ためだけの目的であれば、おそらく、どこかの説明会に1回参加すれば、それで十分だろう。
2)多数の学生を目の当たりにして、思わずビビってしまう
ここにきている学生が、みんな自分の「競争相手」と感じてしまい、しかも、自分に比べて周りがみんなしっかりしているように感じられて、なんだかものすごく不安になってしまう…というタイプの人もいる。
就職活動は「大学入試センター試験」のようなものとは全く違うのだ。人それぞれ、興味・関心の強い業界も違うだろうし、そこに参加した全員がそのイベントに出展している会社に応募するわけではない。特に大手の就職情報会社の主催するようなイベントでは、いわゆる「有名企業」「人気企業」も参加している場合が多いので、そのような会社を目当てに来る学生も多いのだろうが「本気でその会社で働きたいと思っている人」「その会社で働きたいと思っていることを十分にアピールできる人」がどの程度いるかといえば、実際のところ、おそらくそんなに多くはないだろう。言い方を変えれば(特にこの種のイベントが盛んに行われる時期においては)「まだ、とりあえず足を運んでいる」というような状態の人もかなり多いということだ。
それだけに「『あなた自身』はどうなのか?」が非常に重要である。もし、あなた自身が「まだ、とりあえず…」の方だったら、会社説明会の参加数だけこなしても、あまり得られるものはないだろう。まずはとにかく「自己理解」と「『事前の』業界・企業研究」をしっかりしておくべきである。もし「その間にも企業説明会はどんどん行われていくし、動いていないと不安…」というのであれば、少なくとも、自己理解・企業研究と会社説明会の参加を並行しながら進めていくようにしていかないと、企業説明会に参加すること「自体」が目的化してしまい、1)でも述べた通り、それで「就職活動をしているような錯覚」に陥ってしまう可能性が高い
一方、自分自身が「本質を捉えた」就職活動をしていこうという意識を持てている、そしてそのための準備を少しずつでも進められている…ということであれば「何となく足を運んでいる人たち」のことを気にする必要など全く無い。一口に「『本質』を捉えた就職活動」といっても、いろいろな側面から捉えることができるものだが、その『本質』の一つとして言えることは「就職活動とは『他人と勝ち負けを競うもの(内定獲得競争)』ではなく、自分自身が納得感を持てるような進路を見出していくために『自分自身と応募先の会社との擦りあわせ』をおこなっていくこと」だと捉えられているかどうかだろう。それが自分自身できちんと理解・実践できていれば、他人のことなど、別に気にならなくなるはずだ。
3)その説明会で聞いた内容だけで、その会社について理解できた気になってしまっている
特に、イベント色の強い会社説明会では、一度に多くの学生を相手にしなければならない、時間的な制約がある…などといったことから、そこで得られる情報は「会社紹介」的なレベルの内容にとどまってしまう場合が多い。
ところが、それが分かっていないと、このレベルの内容の話で、その会社のことを「すべて理解した」ようなつもりになってしまう。「会社紹介」的なレベル…ということは、会社によってはホームページなどでも知ることができる程度の内容も含まれているということである。つまり、それは「自分で調べようと思えばいつでも調べられる程度の情報」だということである。そして、誰もが簡単に調べられる程度の情報は、実際に応募する際には「その会社に応募する人なら『理解していて当たり前』」だということである。もし、合同会社説明会で聞いた程度のことしか理解していないのに、それで「御社のことはしっかり理解しています」などと、採用選考の時にアピールしたとしても、しっかりと会社研究をしてきた応募者と比べものにもならない…ということになってしまうだろう。
おそらく、その会社について十分に理解していくための(会社研究に活かせるぐらいの)情報は、それぞれの会社が個別に実施する説明会などでなければ、なかなか得ることは難しいだろうし、その説明会にしても、ただ、足を運んで話を聞くという受動的な姿勢ではなく「ここでしか得られない情報を掴みとる」というぐらいの積極的な意識が必要になってくるのである。
以上、主だったものを挙げてみたが、先に述べた通り、このようなイベント色の強い合同会社説明会に足を運ぶことに意味が無いということではない。ただ、このような説明会に参加するのであれば、自分なりに「どのような目的や意義があるのか」をしっかり考えた上で参加することが望ましいということである。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
バックナンバー
特別編・後半 | (2015年4月27日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2) |
特別編・前半 | (2015年4月20日掲載 ) | 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1) |
第24回 | (2015年4月13日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤ |
第23回 | (2015年4月6日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと④ |
第22回 | (2015年3月30日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと③ |
第21回 | (2015年3月23日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと② |
第20回 | (2015年3月16日掲載 ) | 採用選考の面接に向けて意識したいこと① |
第19回 | (2015年3月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥ |
第18回 | (2015年3月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤ |
第17回 | (2015年2月23日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④ |
第16回 | (2015年2月16日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③ |
第15回 | (2015年2月9日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと② |
第14回 | (2015年2月2日掲載 ) | エントリー・採用選考に向けて意識したいこと① |
第13回 | (2015年1月26日掲載 ) | 「雇用される」ということについて③ |
第12回 | (2015年1月19日掲載 ) | 「雇用される」ということについて② |
第11回 | (2014年1月13日掲載 ) | 「雇用される」ということについて① |
第10回 | (2015年1月5日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑩ |
第9回 | (2014年12月29日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑨ |
第8回 | (2014年12月22日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑧ |
第7回 | (2014年12月15日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑦ |
第6回 | (2014年12月8日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑥ |
第5回 | (2014年12月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え⑤ |
第4回 | (2014年11月24日掲載 ) | 就職活動に対する心構え④ |
第3回 | (2014年11月17日掲載 ) | 就職活動に対する心構え③ |
第2回 | (2014年11月10日掲載 ) | 就職活動に対する心構え② |
第1回 | (2014年11月1日掲載 ) | 就職活動に対する心構え① |