KEY流 就活クリニック

【第13回】

「雇用される」ということについて③~
「志望業種を広げる」という言葉の意味について

このテーマも3回目。今回は、先の2回と少し視点を変えて「志望業種を広く持っておく」ことについて考えていくことにする。

先の2回は、どちらかといえば志望業種(やりたい仕事)に対して「狭い」捉え方をしているケースについて見てきたが、あまりに狭い捉え方をしてしまうと、自分自身の「進路選択の幅」を狭めてしまうことになるので、特に自分がそのような傾向だと感じる人は、志望業種・応募先を見つけていくにあたって「視野を広げる」という意識を持つことが大切である。

では、とにかく志望業種を広げておけばそれでOKということなのだろうか…実は、これはこれで一概にOKとは言えないところである。では、すると、どういう場合が「OKではない」と考えられるのだろうか…

それは「志望業種を幅広く持っておく」=「それだけチャンスがいっぱいある」…だから、一つ一つの業界や企業のことを十分に理解してなくても、最終的には「何処かから」は内定がもらえるだろう…などと考えてしまう場合である。つまり「志望業種を広げている」ということを「言い分」にして、応募先の企業に関する情報収集を怠ったり、いくらか情報を集めても、その情報を基に自分なりに深めてみるようなこと…つまり『業界研究』『企業研究』をきちんとしない、あるいはそれを、ついつい先延ばしにしてしまう…といったことを自己正当化してしまうことである。

しかし、結局のところ、やるべきことをやらなかった「ツケ」は、就職活動を始めてからしっかり回ってくると思っておいたほうが良いだろう。

「志望業種(企業)を広げて就職活動を行うこと」…それ自体が間違っているとは筆者自身も全く思ってはいないし「就職活動を充実させていく」ための重要なポイントの一つであることは間違いない。ただし、このポイントは「自分で可能性があると感じた業界や企業の業界・企業研究はしっかりやっておくこと、また、就職活動の中で、実際にそこで働く社員と接していく中で、結果的に自分自身に合わないと思った業界や会社は除外し、ターゲットの絞り込みを行っていく」というような『プロセス』が伴ってこそ「『志望業種(企業)を広げる』意味がある」ということはきちんと認識しておいていただきたい。

特に、社会人としての経験が無い、あるいは経験が少ない皆さんにとっては「社会の全体像(つながりと広がり)を理解する」という意味でも、世の中に存在する多種多様な業種について理解をしておくことは非常に大切なことである。確かに「知らない仕事」には興味・関心を持ちようがないし、興味・関心が無いものに関わっていくためにはきっかけ(ここではそのような仕事・会社の存在を知ること)が必要である…つまり、様々な仕事について、より多くのことを知っていることで、自分自身の、社会人としての「進路の選択肢・可能性」を増やすことになる…ということについては全くその通りだと思われる。

しかし、それはあくまで「自分にとって『より納得感の持てる進路』を選ぶために、その選択肢が少ないよりは多い方が良い」という意味である。そして、自分が選ぶことができる仕事(進路)は、基本的には1つである。(中には副業などで進路が2つ・3つ…という人もいないわけではないが、今の皆さんにとっては、それはあまり現実的ではないだろう…)それだけに、幅を「拡げっ放し」にするのではなく、拡げた後には、次のステップとして「絞り込み」をしていく必要があるというわけである。この「絞り込み」の作業も、自己理解や業界・企業研究がしっかり出来ていないと、また「就職活動(採用選考)は、自分は会社から評価される立場ではあるが、一方で『自分もその会社を評価する』機会である」というスタンスで就職活動を進めていかないと、なかなか思うようにはできないことである。これらのことが出来ていないと、自分自身が「どの進路を進むのか」を『何となく…』で判断することになってしまう。それでは、自分の中で「本当にこの判断・選択で良いのだろうか…」といった「捉えどころのない漫然とした不安」をいつまで経っても持ち続けることにもなってしまうだろう。

「志望業界に幅を持つ」ということは「何でもかんでも」志望先にするという意味ではない。あくまで、進みたいと思う方向を、最初から「一つ」もしくは「ごく少数」に限定しまうのではなく、より多くの選択肢・可能性を持たせるということである。そして、就職活動を進めていく中で、その業界や会社で働く人たちの姿(現場)を見たり、そのような人たちとの会話(例えば「その会社まで足を運んで面接を受けていく」という行動など)を通じて、業界・企業研究の段階で自分自身が持っていたイメージが、より確かなものになったり、逆に思わぬ発見をしたり…そんな中で、応募先にしている会社の「志望度」も時に変化していきながら、最終的に「自分にとって『最も納得感の持てる』進路」を見出し、その進路に進むことが現実となる(その会社に入社する)…それが、就職活動の望ましい形の一つなのではないだろうか。

「志望業種をとりあえず『広げておきさえ』すれば、そのうち何かが見えてくるだろう」というような考え方なのだとしたら、おそらくいつまで経っても見えてくることは何も無く、無駄に時間だけが過ぎていってしまう可能性が高い。やはり、就職活動においては「『自然に』何かが見えてくる」という「受動的」な発想ではなく、その何かを「自分自身で『見出して』いく」という「能動的」「主体的」な意識と行動が大切になってくる。

自分自身では何も考えず「誰かが自然に自分の思い通りの進路に導いてくれる」などといった都合の良いことは、就職活動ではあり得ないことだと思ったほうが良い。それだけに、採用選考が本格化する前に「しっかりと情報を集め」「その情報を精査」していくことで、「その業種が自分自身の志望の範囲に入ってくるのかどうか」の判断をある程度つけておくことが重要である。そして、自分なりに明確な理由があって「志望の範囲内にはどう見ても入ってこない業種」でなければ、まずは一旦、自分自身の選択肢に入れておいて、そこから就職活動を通して絞り込みをかけていくのがよいだろう。

ぜひ、「能動的」「主体的」な意識を持って、充実した就職活動が出来るようになるための「土台固め」にしっかり取り組んでいただきたい。

 

※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。

 

 

バックナンバー

特別編・後半 (2015年4月27日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2)
特別編・前半 (2015年4月20日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1)
第24回 (2015年4月13日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤
第23回 (2015年4月6日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと④
第22回 (2015年3月30日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと③
第21回 (2015年3月23日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと②
第20回 (2015年3月16日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと①
第19回 (2015年3月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥
第18回 (2015年3月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤
第17回 (2015年2月23日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④
第16回 (2015年2月16日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③
第15回 (2015年2月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと②
第14回 (2015年2月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと①
第13回 (2015年1月26日掲載 ) 「雇用される」ということについて③
第12回 (2015年1月19日掲載 ) 「雇用される」ということについて②
第11回 (2014年1月13日掲載 ) 「雇用される」ということについて①
第10回 (2015年1月5日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑩
第9回 (2014年12月29日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑨
第8回 (2014年12月22日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑧
第7回 (2014年12月15日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑦
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑥
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑤
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動に対する心構え④
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動に対する心構え③
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動に対する心構え②
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え①

 

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