KEY流 就活クリニック

【第17回】

エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④~
「コミュニケーション力」と「知識量」の関係(後半)

先回は、幅広い知識を持つことで、自分自身の「情報に対する感度」が高まり、物事を捉えるための視野が広がってくるということについてお伝えをしてきたが、今回は、さらに「様々な人と関わりをもち、コミュニケ―ションを取っていくことができるようになる」ために、幅広い知識が重要である・・・という話をしていきたい。

…とは言っても、そんなに難しい話ではなく、実に単純なことである。(ただ、単純なことほど、それを実現・実行するのが難しかったりするものなのだが…)

例えば、友人や会社の同僚といった、日常的に交流があるわけでは「ない」人(たとえば初対面の人や会社でいえば取引先の人など)と会話をする場合に、その場のコミュニケーションを成り立たせよう思ったら「相手と共通する話題」がいくつかは必要になってくるだろう。そこでは「自分自身が対応できる話題」が多い方が、より多くの場面で対応できる可能性が高い・・・ということは今さら言うまでもないだろう。『話題の引き出し(が多い・少ない)』という言葉も良く用いられるが、結局は「知識の『量』と『幅の広さ』」のことなのである。

例えば、もし、あなたが話をしている相手から、いきなり何らかの話題…たとえば「アベノミクス」などはどうだろうか…に関する話題を振られたとして、あなたが「アベノミクス」について全く、もしくはほとんど知識がなかったとしたら、あなたはどう対応するだろうか?

もし、その相手が親しい友人などあれば「今はそんな話いいだろ!」などと言って終わらせてしまえば済むかもしれないが、もし、それを就職活動の面接の時に面接官から聞かれたとしたらどうだろうか?あるいは社会人になって、取引先の人から言われたらどうだろうか?…分かっているふりをして何とか会話をつなごうとするか、無言になってしまうか、明らかにパニックになってしまうか…おそらくこのいずれかではないだろうか。もし、分かっているふりをしてその場を乗り切ることが出来るぐらいであれば「機転がきく」「度胸がある」など、いわゆる「世渡り上手」という部分では、むしろ大したものかもしれないが、その「分かっているふり」が見抜かれてしまった時には、多少なりとも相手が持つ印象に望ましくない影響が出る(いい加減・信用できない・教養不足などという印象を与えてしまう)だろうし、運よくその場を乗り切れたとしても、内心ヒヤヒヤしながらの会話のやり取りは、その後にドッと疲れが押し寄せてきそうなものである。

1度や2度ならともかく、もし、日常的にそんな場面になるようであれば、それが原因となって、周りの人と自分から積極的にコミュニケーションを取るのが怖くなってしまってしまったり、人によってはそれが高じて、仕事とは関係ないような日常の会話をすることさえ苦痛を感じることになってしまう・・・いわゆる、職場でのコミュニケーションに「不適応」を起こしてしまう可能性だってあるのである…これは、筆者自身の転職希望者の個別相談対応などの経験からも、決して大げさな言い方ではないと思われる。

仕事の場面では「その仕事に関係する」話をするのだから、別に幅広い知識など必要ないのでは?…と考える人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。人間関係を円滑にして職場内での雰囲気を良くする、あるいは仕事で関わる人たちとの信頼関係を築いていくための一側面として、やはり、幅広い知識を持っておくことは非常に意味があることなのである。

これは、社会人経験の無い皆さんも、今までの生活の場面からでも十分にイメージできるだろう…誰だって、自分が話したことに対して、相手(聞き手)が「興味や関心を示しながら聞いてくれている」と感じれば「嬉しい」と思うはずである。そして、その「嬉しい」と思う気持ちは次第に「信頼感」につながってくる。信頼できる人に対しては、そうでない人にはしないような話も思わずしてしまうことがある・・・というのは人に良くみられる性質の1つである。これは裏を返せば、自分が話したことにに全く関心を示してくれない人に対しては、お互いに興味や関心を持てないだろうし、そこから信頼関係も生まれない・・・ということである。

近年、早期離職者(主にその会社に入って3年以内に退職してしまう人)が増加している傾向がある。その理由はいろいろ考えられるし、中には「前向きな転職」「キャリアアップ」と言える場合もあるので、その傾向について一概に良し悪しが語れるものではないのだが、「仕事でのストレス」「仕事がきつい・面白くない」「職場の人間関係が悪かった」・・・など、ネガティブなイメージの強い理由もよく聞かれる。

これらの理由は「言葉だけ」だと、どうしても「雇用する側の雇用環境の整備が不十分であること」が最大の原因だとイメージしてしまいがちなのだが、この中には「辞めてしまった人の方が、あまりにも『知識の引き出し』が少なくて会話についていけず、だんだんと周りの人とのコミュニケーションが取れなくなっていってしまったこと」が原因になっているものが、ある程度の割合であるのではないか…と、筆者は感じている。そして、この原因での離職を防ぐには、雇用する側の職場環境改善などの努力だけではなく、雇用される側にも「コミュニケーション力を高めていく(とその土台となる知識量を増やす)」ように努力すべきところがあるのではないだろうかと考えるのである。(ただし、これはあくまで筆者がその現場で携わっていく中での「主観的・直観的」な認識であり、何らかの明確な根拠に基づいたものではないこと、また、ほぼ全面的に雇用する側に問題があるために、結果的に雇用される側が離職せざるを得なくなってしまった・・・というケースも数多くあるということも理解した上で、敢えて「一つの見方」として述べていることはくれぐれも断っておきたい)

ここまで多少ネガティブな言い方をしてきてしまったが、結局のところ「ある程度幅広い知識を身につけておくということ」=「ついていける話題の範囲が広い」ということは、会話など、双方向のコミュニケーションを図っていく際の「怖さや不安を払拭する」=「自信を持って周りとのコミュニケーションを取ることができる」ことにつながってくるということを、ぜひ意識していただきたいのである。

また、普段から「知識を増やしていくことの大切さ」を意識し実践できていると、もし、先程述べたような会話の場面で自分が全く知らないような話になった場合に「知らないことを素直に知らないと認め『この場で勉強させてもらうんだ』という姿勢で相手の話を聞く」というようなことも出来てくるだろう。これも言うまでもないことだが、世の中の物事の「全てを知っている人」などいない。それだけに、その場で出た話題について知識が無かったからそれでダメ・・・ということでもない。むしろ「どんな場面でも勉強させてもらう」「この場で、その相手から新たな知識を得させてもらう」…といった、いわゆる「知的好奇心」の強さを示すことが出来れば、むしろ、その前向きな態度に好印象を持たれる場合も多い。(ただし、誰もが知っているような「あまりにも当たり前」なことであったり、その業界・仕事に関わっていく上で知っていなければ業務に支障が出る可能性がある…というようなレベルのものでは「知らないからここで勉強させてください」…というのはさすがに通用しないだろう)

コミュニケーション力の向上を含め、知識というのは、あくまでそれを「どう活かすか」が重要であって、ただ「知っている」ということだけで。よく「知識をどう知恵にしていくか」…と言われるが、これはまさにその通りだろう。ただ、それも知識の絶対量が少なければ、「知恵の『素材』」なるものが不足しているということであるので「自分は知識不足だ」と感じている人は、先回も述べた通り、あまり細かいことは考えずに、まずはとにかく、知識量を増やすための行動を起こしてみてはいかがだろうか。これは、いきなりがっちり勉強する…ということでなくても、まずは「自分のまわりにある情報や物事に積極的に関心を持つ」という意識を持って、今までと行動を少し変えてみることで、次第に、自分自身に変化を実感できるはずである。

是非、採用選考が始まる前に、知識の重要性について意識を持っっていただき、十分な準備をしていただきたいものである。

 

※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。

 

 

バックナンバー

特別編・後半 (2015年4月27日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2)
特別編・前半 (2015年4月20日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1)
第24回 (2015年4月13日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤
第23回 (2015年4月6日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと④
第22回 (2015年3月30日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと③
第21回 (2015年3月23日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと②
第20回 (2015年3月16日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと①
第19回 (2015年3月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥
第18回 (2015年3月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤
第17回 (2015年2月23日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④
第16回 (2015年2月16日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③
第15回 (2015年2月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと②
第14回 (2015年2月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと①
第13回 (2015年1月26日掲載 ) 「雇用される」ということについて③
第12回 (2015年1月19日掲載 ) 「雇用される」ということについて②
第11回 (2014年1月13日掲載 ) 「雇用される」ということについて①
第10回 (2015年1月5日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑩
第9回 (2014年12月29日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑨
第8回 (2014年12月22日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑧
第7回 (2014年12月15日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑦
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑥
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑤
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動に対する心構え④
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動に対する心構え③
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動に対する心構え②
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え①

 

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