KEY流 就活クリニック

【第9回】

就職活動に対する心構え⑨~
情報の活用(2) 「広報媒体」による企業研究について

今回のテーマは前回に引き続いて「情報の活用」である。自分が興味を持っている、あるいはエントリーをしようする企業のことについて知るために、その企業のホームページや会社案内を確認するということはほとんどの人がすることになるかと思われるが、今回は、そのホームページや会社案内について「情報としてどのような位置づけで見ていくべきか」について考えてみたい。

ずばり、企業のホームページや会社案内というのは、企業側にとっては、あくまで「広報手段(広報媒体)」のひとつであり「その企業のことを知ってもらう、さらにその企業に対して『良い印象』を持ってもらうため」に、それを作成・公開しているものだということを大前提として認識をしておいたほうがよい。

そして、その中に「人材の採用」に関するページもあるということは、これらのページの内容についても、やはりそこには「広報的な意味合い」が含まれていると考えるべきなのである。

それを意識せずに、ホームページや会社案内で紹介されている内容を理解するだけで、その企業のことを全て把握していると思ったら、それは大きな勘違いだと言わざるを得ない。繰り返しになるが、これらで公開されている情報は、それを見る人に『良い印象』を持ってもらうために発信している情報だということをしっかり意識しておかなければならない。

だからと言って、そこに示されている内容が「事実(現実)とは違う」という意味ではないし、会社という組織の現実は情報として発信出来ないぐらい厳しいものである…などと、脅しをかけるつもりもない。(ただし、数多くある企業の中には、極めて少数ではあるものの、事実ではないことを平気で発信するような企業が存在するので注意は必要だろう)

ぜひ、ここで意識をしていただきたいのは、それらの情報を「糸口」「手掛かり」にして、その会社が「新たに迎え入れようとしている人材に対して、何を期待しているのか…」について、自分なりに読み取って、そこから考えを深めてみる、さらに自分から行動を起こして、広報として発信をされているものではない「本質的な情報」を収集していく…という姿勢を持ちたいということである。

…と言っても、なかなか具体的なイメージを持つことが難しいと思われるので、一つの例を挙げてみよう。

情報収集のために、ある会社のホームページをいろいろと見ていく…その中で「当社の社員紹介」というようなページを見つけた。そこで、そのページを見ていくと「当社は『自分の思いを形にできる』会社です!」などといった見出しと共に、社員の活き活きとした表情が印象的な写真が大きく掲載されている…

ここで、この内容を「情報として「ただそのまま受け止めるだけ』」の人は、例えば「この会社は自分のやりたいことを好きなようにやらせてくれる会社なんだな…」などと一方的に解釈をして、採用側がこのような情報を発信している「真意」や「意図」を考えないままに応募し、そして、採用選考で「自分のやりたいことを実現させてくれる…というところに魅力を感じました」と、その部分をそのままアピールしてしまう…残念ながら、このような人の多くは、その後の選考に残ることはできない。

一方、ここで、採用側の「真意」や「意図」を読むことが出来る人は、「自分の思いを形にする」…それを実現させるために「『自分が会社に対して』何をどうしたらようのだろうか」を考えられる。そして、それを実現するためのプロセスを、自分なりに具体的にイメージし、言葉にしていく努力が出来るのである。これについては、特に社会人経験の無い人には非常に難しいことと思われるかもしれないが、あくまで、まず大切なのは「そのような意識で応募先の会社のことを理解しようとしているのか?」…である。

そして、そのような意識があれば、採用する側の「真意」や「意図」をきちんと確認するために、その会社で働いている人の声を直接聞く…つまり、会社説明会や会社訪問など「『生の情報』が得られる可能性が高い機会」がいかに大切なのかを感じることは難しくないはずである。広報的な情報ばかりをどれだけ集めてみたところで、所詮、1度の「生の情報」を得る機会に勝ることはないだろう。

先程の例で挙げた「自分の思いを形にする」…にしてみても、例えば「自分が提案したい企画を実現するまでに、その会社ではどのような段取りを踏む必要があるのか」とか「提案された企画はどれぐらいの割合で実現できるものなのか」「提案した企画を実現するために、社員はどのような努力をしているのか」…など、考えていけば多くの視点が出てくるだろうが、それらをその会社の社員に実際に聞いてみれば、言うまでも無く「リアルな情報」を得られる可能性は高い。

逆に言えば、もし、そこまで生の情報を収集に取り組んでみたところ、広報的な情報からイメージしていたことが、実際の社員から感じることが出来ないようであれば、もしかしたら、その会社の実態は、広報的に発信しているものとはかけ離れているのかもしれない…ということに気付くことができる。そして、そうであれば、この会社は自分の就職先として望ましくないのかも…といったことも、だんだんと「直感的に」認識できるようになってくる…つまり「情報に対する『感度』が高くなってきた」ということであり、これは「就職活動で得ることのできる『成長感』の一つ」だとも言えるだろう。

少しはピンと来ていただけただろうか…。就職活動において「企業研究をする」「情報収集をする」ということは、単に「発信されている情報を取り込む」だけではなく、そこから自分自身で必要な「手間」をかけることで、その意味が出てくるのである。それだけに、誰もが簡単に得られる情報をちょっと見てみた程度で「企業研究や情報収集はきちんと出来ている」などと思っていたら、就職活動が始まってから苦労することになる可能性が高い。

確かに、会社説明会などで、自分から積極的に社員にいろいろと聞いてみるというのは「なかなか勇気が出せない…」と感じる人も多いかももしれないが、一方で「質問といえば『待遇』や『福利厚生』など、条件的なことばかり…本気でこの会社で働きたいと思っていたら、もっと聞きたいことがあるはずだと思うんですけどね…」などといった採用担当者の声は、雇用環境が良し悪しに関わらず、毎年、非常によく聞かれるものである。そのような中で「この会社の本質的なところをもっと深く知りたい」という姿勢を示すことが出来れば、それだけでも、相当、人事担当者の印象に残るに違いない。だからこそ、自分なりに情報を深めていくことが重要だという意識が出来てきたら、あとは、思い切って「最初の一歩」を踏み出す勇気を持ってもらいたいものである。

最後にもう一度繰り返すが、本当の意味での企業研究・情報収集は、自分の頭と体を「能動的に」駆使していかなければ出来ない…ということは、ぜひ、この時期からしっかり意識しておこう。

 

※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。

 

 

バックナンバー

特別編・後半 (2015年4月27日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2)
特別編・前半 (2015年4月20日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1)
第24回 (2015年4月13日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤
第23回 (2015年4月6日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと④
第22回 (2015年3月30日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと③
第21回 (2015年3月23日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと②
第20回 (2015年3月16日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと①
第19回 (2015年3月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥
第18回 (2015年3月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤
第17回 (2015年2月23日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④
第16回 (2015年2月16日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③
第15回 (2015年2月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと②
第14回 (2015年2月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと①
第13回 (2015年1月26日掲載 ) 「雇用される」ということについて③
第12回 (2015年1月19日掲載 ) 「雇用される」ということについて②
第11回 (2014年1月13日掲載 ) 「雇用される」ということについて①
第10回 (2015年1月5日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑩
第9回 (2014年12月29日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑨
第8回 (2014年12月22日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑧
第7回 (2014年12月15日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑦
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑥
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑤
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動に対する心構え④
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動に対する心構え③
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動に対する心構え②
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え①

 

ログイン
有料講座の申込み・ご利用にはログインが必要です
有料講座にお申し込みいただく前に会員登録が必要になります

 → ヘルプ・サポートデスクはこちら
 
→ 究極の筆記試験対策
→ 自己表現の核心
→ 転職版「自己分析&自己表現の核心」

当ホームページに掲載された写真、テキスト等は株式会社キーキャリアがその権利を所有・管理しております。

無断での流用、転載、加工修正等はご遠慮願います。

SSL

当ホームページはセキュリティ管理、ならびにプライバシー保護のためSSLプロトコル暗号化通信に対応しています。