
【第20回】
採用選考の面接に向けて意識したいこと①~
面接は「コミュニケーション力」を確認する場でもある
今回からは、企業などが行う採用選考の中でも、特に「面接」に対する意識の持ち方について考えてみたい。
面接も、それを乗り切るための「『スキル』や『テクニック』のようなものもの」ばかりを気にしてしまい、「面接の本質」について全く意識できていないために、思うような結果が得られない人が毎年出てくる。皆さんは、そのようにならないために、このコーナーでお伝えすることを参考にしていただいきたいと思う。
採用選考のプロセスにおいて、面接を実施している会社は、ほぼ「100%」といってもよいだろう。しかし、応募する側からすれば、面接に対して「どうも苦手だ…」「面接の場面ではどうしても緊張してしまう…」というような印象をもっている人も多いのではないだろうか。そこで、このテーマを扱うにあたって、まず、そもそも「面接というものをどう捉えるべきなのか」について考えてみたい。
応募する側としては、その会社などに応募するにあたって、当然のことながら「その会社に採用してもらいたい」という強い思いがあるだろう。それだけに、どうしても、自分自身を「良く見てもらいたい」⇒「良く見てもらえれば面接を通過できる」⇒「面接を通過するには、とにかく『面接官に気に入られる』『面接官のウケをよくする』ことが重要」…いう思考になってしまいがちである。
確かに「それが全く間違った考え方」だとは言い切れないところはある…しかし、採用側にとっては、あくまで面接をする第一の(そして「これがすべて」と言っても言い過ぎではないと思われる)目的というのは「この応募者が、ウチの会社や組織にとって戦力になる(可能性のある)人か」、つまり「会社として『求める人材像』にどれぐらい近いのか」を「応募者と『直接話をすることによって』判断する」…ということなのである。
「採用担当者(あるいは決定権者)に気に入られるのかどうか(いわゆる「フィーリング」的なもの)」という部分については、あくまで、採用担当者が「この応募者は、会社として求める人材像にかなり近い人である」という判断がされていることが、まず前提にあって、その上で、最終的に採否を決定するための「(そうは言っても大きな)ポイントの1つ」になるものと考えるべきである。
つまり、ただ単に「面接官の印象を良くすること」ばかり一生懸命になっても、アピールしていること(これは質問に対する答えの内容だけではなく、その人が持つ「雰囲気」的なものも含めて)が、その会社の求める人材像から「明らかに外れて」いる…つまり「評価の土台(ベース)になる部分」が、全くかみ合っていないようであれば、その面接官も「この人の『ノリ』は悪くないんだけど、うちの会社で働いてもらうということでは厳しいかな…」と判断せざるを得ないのである「
では、採用担当者が「戦力としての可能性」を判断する切り口として、どのようなものが考えられるのか。
細かい部分については、当然のことながら、会社ごとに独自の切り口や特徴があるとは思われるが、基本的な部分については、どのような会社でも、おそらく、以下のようなところが挙がってくるのではないだろうか…
◎応募者の「人物像(人柄)」を確認する (「長所・短所」「その人の持っている雰囲気」など)
◎応募者の持っている「能力」を確認する (「専門能力」「事務処理能力」「社会人としての教養(一般常識)」など)
◎応募者の「資質」を確認する (「その会社や仕事に対する熱意や意欲」など)
そして、これらの点について、応募者の意識や能力の程度(レベル)を確認するために「質問とその受け答え」いう流れの中で確認をしていくのだが、ここできちんと意識をしておきたいことは、それらの質問というのは、いわゆる「Q&A」…つまり、質問に対して「正しい答え」を述べられたかどうか…で評価をするための質問ではなく、重要なのは、その質問から「スムーズな双方向のコミュニケーション(会話のやり取り)」に発展していくことができるのかどうか…ということなのである。
…といきなり言われても、なかなかすぐには理解できないと思われるので、ひとつの例を挙げてみよう。
例えば「あなたの長所は何ですか?」と聞かれたとしよう。これが「質問に対してうまく答えられればば良い」…という考え方であれば、例えば「ねばり強く物事に取り組むことです」と答えればそれでOK。そして、すぐ次の質問に…というのが、いわゆる「Q&A(一問一答)」的な展開であるが、面接などで展開される「双方向のコミュニケーション(会話のやり取り)」の場合は、一つの質問とその答えを「きっかけ」として、さらに話に「深まり」「広がり」が出てくるのが自然な流れである。
例えば、長所を聞かれて「ねばり強く物事に取り組むことです」と答えれば、そこから…
面接官)「では、実際にねばり強く取り組んだ経験を何か教えていただけますか」
応募者)「●●です。…(*以下、そのエピソードについて話す)」
面接官)「なるほど。その●●をやり遂げた時に、周りの人の反応はどうでしたか?」
応募者)「ゼミの先生は『今まで指導してきた学生で、ここまでやりきった学生は初めてだ』…と言ってくれました」
面接官)「へェ、そこまで認めてもらえたというのはすごいことですね…」
…などといった感じだろうか。
会話というのは「双方向のコミュニケーション」の中でも最も基本的なものの一つである。採用側は、面接という「限られた時間」の中で、可能な限り、さまざまな側面から応募者の人柄・能力・資質などを確認しているのだが、その中で「社会人として求められる基本的なコミュニケーション力」を、その会話のやりとりを通じて確認しているのである。
「相手の話を聞く力」「自分の話を伝える力」「自分の感情をコントロールする力」「人と関わる力」「自己を客観的に見つめる力」…などは、特に重視する要素や、その程度の差は会社によって違いはあるだろうが、おそらくどのような仕事で働くにしても非常に重要な力であるし、実際に、日本経済団体連合会(日本経団連)が、毎年アンケート調査をしている「企業が採用選考時に重視する点」でも、この「コミュニケーション能力」というのは、時代は変わっても、毎回「第1位」になっている。しかし一方で、これらの力は筆記試験のように数値化して測ることが難しいものでもある。だからこそ、面接という「応募者と直接会話が出来る機会」にそれを確認する…というわけなのである。
だから、時々、学生や就職希望者から面接に関して「どう答えたら面接官の『ウケ』が良いのか」というような相談や質問をされることもあるのだが、結局のところ「面接官の前で、必要以上に『いい格好』をしようとする…まずは、その考え方自体を改めること」「自己理解と企業研究を十分にしておくこと」「今まで会話をしたこと無いような(世代の)人たちと話をする場面に、多少は慣れておくこと」…この3つに行き着くという感じである。
繰り返しになるが、採用する側にとっての面接の目的は「会社として『求める人材像』にどれぐらい近いのか」を「応募者と『直接話をすることによって』判断する」…ということである。まだからこそ、まずは「面接は、面接官からされた質問に『うまく』『きれいに』答えられることが評価されるのではない」という意識を持つようにしていただきたい。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
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