KEY流 就活クリニック

【第22回】

採用選考の面接に向けて意識したいこと③~
面接で「よく言われること」とそれに対する考え方(前半)

前回までは「面接の『本質』」と、その本質を踏まえた上での「面接に対する意識の持ち方」について考えてきた。

筆者自身も、度々、模擬面接で、指導やアドバイスをする機会があるのだが、「この程度のことは誰でも理解していることだろう」と思うようなことでも、その理解が十分でないために、必要以上に悩んでいたり不安になっていたり、また、その悩みや不安が質問という形で出てくることなどもあるので、今回と次回の2回にわたって、いくつかのポイント示していくことにする。

まず、今回は「自分が発言・アピールする場面」から、よく聞かれる3つのポイントについて考えていくことにしたい。

◎グループディスカッションなどで、自分から積極的に意見を出せる自信が無い…

集団やチームで物事を進めていく時には、それぞれに「役割」が与えられる場合が多い。そして、その役割は、メンバーそれぞれが持っている強みが活かせるように分担されると、より効果的に機能していくだろう。逆に、メンバーひとりひとりの能力が高かったとしても、あまりに同じタイプの人ばかりが集まってしまうと、それぞれの強みを発揮するどころか、むしろ反発や衝突を招いてしまうことも含めて、思うような効果が出ない…というのはよく言われることである。例えば、野球などでも、1番から9番までの打順を組む際に、いわゆる「4番タイプ」と言われるような「長距離ヒッター」ばかりを並べてメンバーを組んでも、それだけで必ずしも「超強力打線」になるわけではない。やはり足の速い選手や小技に優れた選手などがいるからこそ、その長距離バッターの強み(破壊力など)がより活きてくるのであり、まさに、さまざまなタイプのメンバーが「『適材適所』で『バランス良く』機能する」ことがチームプレーでは非常に重要だと言える。

そのようなことは、グループディスカッションの場面でも同じことが言える。もし、メンバーの全員が「自分が!自分が!…」と積極的に意見を出していっても、その主張がぶつかり合うだけで、グループとしての一つの方向性を示していくことができなければ、そのグループの評価は非常に低いものになってしまうだろう。

例えば「出てきた意見をわかりやすくまとめる(要約する)」「話が本題から逸れていった時に冷静に軌道修正を促す」「意見が一つの側面に偏ってきたときには別の見方を提示してみる」…など、たとえ発言する「言葉の数」は少なくても、グループとしての成果を上げるために担うことができる役割はあるはずだし。採用側が特に注意しているのは、単に発言量が多いかどうかではなく、あくまで「自分の持っている強みを活かしながら、グループの議論が望ましい方向に進むことに貢献出来ているかどうか」でその人から見えるかどうかである。

…ということは「どのような役割だと、より、自分の強みを発揮できるのか」について自分なりに理解している…つまり『自己理解』が十分に出来ている必要がある。もし、自分の中でそれがはっきりしないようであれば、さらに自己分析をしっかり行うこと、特に「自分の強み」についてしっかりと理解しておくことが必要だろう。

また、もう一つ意識をしておくべきことは、自分の向いている役割を理解し、その役割だけこなせれば十分だということではない…つまり、「自分はある役割は自信を持って出来るけど、それ以外の役割はできない…」というようでは、まだ不十分だということである。実際の仕事の場面などでもそうだが、グループで物事を進める時に、いろいろなタイプの人がバランス良く、そのグループのメンバーとして集まるとは限らない。むしろ、グループのメンバー全員が、自分に最も向いている役割を担うことができる(そのような役割分担がスムーズに出来る)…というケースはほとんど無いと言ってもよいだろう。

そこで必要になるのが「他人を見る目」と「自分自身の柔軟性」である。グループのメンバーを観察しながら、メンバーのタイプに偏りがあると感じた時には「(本当は得意な役割ではないけど、メンバーの中にいないと思われる)●●の役割を担います」…などと、その場の状況に応じて様々な役割の担える…つまり「オールラウンダー」「ユーティリティプレーヤー」といわれるような働きができれば非常に理想的である。そして、そのようになっていくためには、普段からさまざまなタイプの人と関わり、その人たちの持っている特徴や強みを、いわゆる「肌で感じてみる」のが効果的であろう。

そうでなくても、社会人として働き始めれば、さまざまなタイプの人と関わっていくことになることは、人により、程度の違いはあるかもしれないが間違いのないことである。それだけに、今のうちから、まずは自分にとって無理のない程度・範囲で十分なので、交流の範囲を広げていくことは、単にグループディスカションの対策ということだけではなく、社会人になってからも様々な場面でプラスになっていくことだろう。

、い ◎集団面接で、自分が言おうと思っていたことを先に人に言われてしまったらどうしよう…

これは「就活のKEY」の他コーナーでも述べていることだが、面接官は「答えそのもの」に関心があるわけでなく、その答えに至るプロセス…つまり「その人自身の考え方」や「そのような考え方をする根底にあるもの」=『応募者の人柄』を知ることで、自分たちの会社や組織の一員としてふさわしいのかを判断する手掛かりにしたいのである。

つまり「結論」として出てくる言葉は全く同じだったとしても、その結論に至る『理由』や『経験』などの部分で「(他の人とは違い)自分は…」という内容を示すことができれば全く問題はないし、特に集団面接の場合、面接官は「他の応募者と比較しながら、それぞれの応募者の人柄を知りたい」と考えている場合が多いので、『プロセス』の部分で自分の人柄をより明確に示す…という点からは、結論が他の応募者と同じというのは、他の応募者との比較の上では、むしろ「好都合」とさえ考えることもできるのである。

『理由』や『経験』などまで、他の応募者と全く同じ…ということはさすがにありえないとは思われるが、それでも、本当に偶然に、先に発言した応募者とほとんど同じような内容しか発言できない…という場合については、発言の始めに、例えば「私も、●●さんと同じようなことではあるのですが…」と、一言付け加えて、あとは自分が話をしようと思っていたことを堂々と話をすれば十分だろう。

繰り返しになるが、面接官が見ているのは、あくまで『人柄』の部分である。人柄を感じるのは「話の内容そのもの」だけではなく「話し方」や「表情」といった話の内容以外の側面も、まさに『人柄の一部』であり、むしろ、そちらをしっかり見ている場合も非常に多い。発言をする側(応募者)には、そこまで意識する余裕はないかもしれないが、聞いている側には、そのアピールが「自分なりに考えてきた内容がたまたま他の応募者と重なってしまったのか」それとも「苦し紛れに他の応募者の言っていることをマネしているだけなのか」は感覚的に捉えられているはずなあ野で、とにかく余計なことはあまり考えず「自分が『言うべきこと』『アピールしたいこと』を自信を持って言う」ことを心がけよう。

◎すぐに答えが返せなかったり、途中で混乱したり、言葉に詰まって「沈黙」してしまったらどうしよう…

普段の会話のやり取りで、聞かれたことは全て即答し、しかも、スラスラと淀みなく話ができるということがあり得るだろうか…?どんなに「話し上手」と言われる人でも、会話の途中で、その場で考えながら言葉を発したり、時には、考えがすぐに言葉にまとまらずに言葉が詰まったり、沈黙してしまうこともあるはずである。

このコーナーでも以前(第20回)にお伝えしている通り、面接は単なる質問の受け答えではなく「会話のやり取り」だという側面がある。そのような意味では「聞かれたことに対して、とってつけたようにきれいに返答する」というのは、普段の会話のやりとりからすれば、逆に「不自然」だとさえ言えるだろう。

「質問に対して沈黙してしまったり、多少言葉に詰まったぐらいで採否に影響することはない」ということは、採用担当者の声としてもよく聞かれるが、これは本当にその通りだと思う。繰り返すが、沈黙や言葉の詰まり・噛みなどは日常の会話のやり取りの中では「当たり前のように起こる自然なこと」なのである。

ただし、そうは言っても、物事には「程度」というものがある。沈黙と言っても、質問のたびに非常に長い間沈黙してしまったり、聞いている側が話の内容が理解できないほどに言葉に詰まったり噛んだりし続けてしまっていては、さすがに「基本的なコミュニケーション力」に疑問を持たれてしまうだろう。あくまで「会話のやり取り」という点からは、そのやりとりが「会話として成立している」ということが前提であるのは言うまでもないが、それが踏まえられていれば、面接を「特別な場面」だと思い込んで、自分自身に不要なプレッシャーをかける必要は全くないだろう。

いかがだろうか…。ただし、これはあくまで「就活クリニック」流の考え方であり、もしかしたら、他の人は違った見方・アドバイスをするかもしれない。どのアドバイスを活かすのかはご自身で考え、判断をしていただくとして、もし、今回の話で参考にしてもらえそうなところがあったのであれば、ぜひ、それを自分なりに活かしていただきたいと思う。

では、次回も引き続きいくつかのポイントについて考えていくことにする。

 

※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。

 

 

バックナンバー

特別編・後半 (2015年4月27日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2)
特別編・前半 (2015年4月20日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1)
第24回 (2015年4月13日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤
第23回 (2015年4月6日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと④
第22回 (2015年3月30日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと③
第21回 (2015年3月23日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと②
第20回 (2015年3月16日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと①
第19回 (2015年3月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥
第18回 (2015年3月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤
第17回 (2015年2月23日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④
第16回 (2015年2月16日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③
第15回 (2015年2月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと②
第14回 (2015年2月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと①
第13回 (2015年1月26日掲載 ) 「雇用される」ということについて③
第12回 (2015年1月19日掲載 ) 「雇用される」ということについて②
第11回 (2014年1月13日掲載 ) 「雇用される」ということについて①
第10回 (2015年1月5日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑩
第9回 (2014年12月29日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑨
第8回 (2014年12月22日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑧
第7回 (2014年12月15日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑦
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑥
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑤
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動に対する心構え④
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動に対する心構え③
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動に対する心構え②
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え①

 

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