KEY流 就活クリニック

【第11回】

「雇用される」ということについて①~
「華やかな世界」に飛び込みたいなら、それなりの覚悟は持っているか?

年も明けたこの時期になってくると、自分自身が志望する業界・業種などについても、だんだんと具体的にイメージするようになってきてもらいたいところではあるが、その際に意識しておきたいことについて、今回から3回でお伝えをしていきたい。

まず、今回は、いわゆる「人気が高い業界」と言われることが多い業界で働くということについて考えてみたい。

「人気の高い業界・仕事」というのは、どちらかといえば「華やかな」イメージの強いものが多いのだが、特に、これらの業界を志望する人によくみられる傾向として挙げられるのが、「イメージ」や「憧れ」ばかりが先行してしまって、「『そこで働く』にあたっての『現実』や『全体像』」がきちんと理解できていない場合が多い…ということである。

これを、もう少し具体的に言えば、その「モノ」あるいは「情報」や「サービス」を利用する『消費者側』の視点だけで、その仕事や会社に対するイメージを膨らませてしまい、「その仕事の中には、消費者からは見えない地味な業務も含まれているのではないか?…それはどのような業務なのか?…そして、それを含めて自分のやりたい仕事として考えられるのか?」ということや「自分自身の特性・強みが、その業界でどう活かせそうなのか?」「自分がその一員になることで、どのように会社に貢献できそうなのか」…など、いわゆる『提供する側』の視点で「その仕事と自分自身とのマッチング」をしっかりと考えられていない…ということであり、それは、結果的に、自分なりにはきちんと捉えているつもりでも、採用側が本当に知りたいところをきちんと捉えた「自己PR」や「志望動機」になっていない…というところに繋がってくる。

例えば「マスコミ業界」というのは、時代を問わず非常に人気の高い業界の一つであるが、以前、私が学生から受けた相談でこのようなものがあった。

Yさんは、マスコミ業界、特にテレビ局への就職を強く希望していた。「そのような業界で内定を得るためにやっておいた方がよいことは何なのか」を聞きに来たのだが、その前に「そもそも、なぜ、そんなにマスコミ業界にこだわっているのか」、その理由を聞いてみたところ、返ってきた答えは「テレビが大好きでよく見るんですけど、テレビの現場って、何だかとても楽しそうじゃないですか。あんな楽しそうな現場で仕事が出来たら、自分も頑張れて、楽しく仕事が出来るかなと思って…」というものだった。

「甘い!甘すぎる!!」「そんな意識では就職できるどころか書類選考も絶対に通らないよ!」と、思わず心の中で叫んだが、Yさんには、以下のような「たとえ話」をしながらその認識の甘さを指摘してみた。

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世の中には、いろいろな業界があるが「華やか」と言われる業界もあればそうでない業界もある…ただ、それはあくまでも外側から見た印象であって。見た目が華やかだから、何もかも全てが華やかだろうと考えていたら大きな間違いである。いくつかのたとえ話をしてみよう。

【たとえ話①】
「舞台裏」という言葉がある。舞台が非常に豪華な劇場でも、舞台裏まで表舞台と同じように豪華になっているなんてことはない。舞台裏というのは非常に簡素だし、道具や備品がいろいろ置いてあって雑然としていたりと、表舞台とは全く違う。あなたが今まで過ごしてきた中学校や高校の体育館の舞台裏もそうではなかっただろうか?…舞台裏がそうなっていてもよいのは、そこが「観客からは見えない場所」だからである。あなたの考え方は「今まで『自分の目で見たことは無い』けれど、きっと舞台裏も表舞台と同じぐらい華やかなはずだ」と言っているようなものだよね…

【たとえ話②】
テレビのいわゆる「ドッキリ企画」などで「後輩芸能人が大先輩にいきなり激怒されて、思わずパニックに陥る」…みたいな場面がよくあるが、なぜ、あれが「ドッキリ」として成り立つのだろうか?…それは、当事者たちにとっては「あのようなことは、その現場にいる人にとっては、普段から起こり得る可能性があること」だからなのではないだろうか?…もし、そうでなかったおしたら、ドッキリを仕掛けられた人も、明らかに起こりえない状況を前に、すぐに「この状況は明らかにおかしい…もしかしてドッキリなのでは?」と思うはずではないのか?…もし、それも違うというのであれば、例えば、後輩がその状況に極端に動揺してみたり、泣きながら震え上がるといった仕草なども含めて、すべてが「その企画『台本通り』」ということになってしまうだろう。…いずれにしても、少なくとも視聴者の関心を引き付け、面白おかしく見せるために、その裏側には、その業界(ここで言えば芸能界)の厳しい側面や、アイディアを実際の形(ここで言えば映像)にするまでの綿密な段取りといったものがあるのではないか?…ということは、多少なりとも意識できているのかな?…

【たとえ話③】
テーマパークや様々なイベントなどで、自分自身も楽しそうにしながら、観客を盛り上げているスタッフさんとかをよく見かけるけど、あれは「あくまで『場を盛り上げる』という仕事」をしているのであって、決して自分自身が観客として楽しんでいるわけではない。実際、そこにいるスタッフさんたちは、その催し物を観客と同じように見ていられるわけではなく、ほとんどの場合、観客の側を向いて、そこにいる観客の安全確保や誘導、また、時にはルールを守らない観客に注意をする…といったことをやっているのではないか。そして、その人たちは「観客として楽しんだ人たちが払ってくれた」入場料などから、労働に対する対価(給料)をもらっている…もし、あるスタッフさんが自分も「観客として」その場を楽しみたいと思ったら、言うまでも無く、休みの日などに、一般の入場者と同じように入場料を払わなければいけないのではないのかな?…

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いかがだろうか。あくまで「たとえ話」であるので、極端な言い方をしているところはあるが、もし、皆さんの中でも、仕事に対する捉え方・イメージの持ち方が「華やかな部分」に偏っていると感じたら、このタイミングで「なぜ、その仕事をしたいのか?」「なぜ、その業界で働きたいと思うのか?」…を、今一度、しっかり考えてみる必要があるだろう。

誤解はしないでいただきたいが、もちろん、そのような華やかなイメージの業界で働いてみたいと思うことそのものが良くないと言っているのではない。その業界で「働く」ということで考えてみた時に「現実的な(多くの場合は厳しい)側面まで、自分なりに情報収集し、業界/企業研究によって十分に理解をした上で、それを踏まえて、このような仕事・業界で頑張っていきたい!!」…というぐらいの明確な意識を持てているかどうかが、特に人気の高い仕事・業界では大切である(もっとも、このような意識の持ち方は、華やかなイメージの仕事・業界に限らず、全ての仕事・業界に言えることである…)

実際の採用選考の現場でも、消費者側のイメージだけで選考に臨んでしまう学生は、(100%とまでは言わないが)ほぼ、選考初期の段階で不採用という結果になる。これは逆に言えば、華やかな業界は採用予定者数に対して応募者数が非常に多い(倍率が高い)が、先程述べたようなことをきちんと意識できている応募者が「本当の意味での『志望者』」だとしたら、「本当の倍率」は意外と現実的な数値になるのではないだろうか。(…とは言え、「本当の意味での『志望者』」も相当な人数いるわけであり、その中から、さらに選考で絞り込まれていく中で、採用に至るのは決して簡単なことではないのであるが…)

時代を問わず、また、業界を問わず、就職活動を進めていくにあたって「業界研究」「企業研究」は特に重要だと言われるが、イメージ先行の傾向が強い業界では、その重要度はさらに高くなってくる。それだけに、このコーナーでも繰り返し述べているが「誰でも知ることが出来るレベルの情報収集」では、業界・企業研究も十分とは言えず、いわゆる「生の情報」をどれだけ積極的に取りに行けるのかが重要になってくるだろう。

 

※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。

 

 

バックナンバー

特別編・後半 (2015年4月27日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(2)
特別編・前半 (2015年4月20日掲載 ) 一口に「就職活動がうまくいかない」と言っても…(1)
第24回 (2015年4月13日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと⑤
第23回 (2015年4月6日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと④
第22回 (2015年3月30日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと③
第21回 (2015年3月23日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと②
第20回 (2015年3月16日掲載 ) 採用選考の面接に向けて意識したいこと①
第19回 (2015年3月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑥
第18回 (2015年3月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと⑤
第17回 (2015年2月23日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと④
第16回 (2015年2月16日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと③
第15回 (2015年2月9日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと②
第14回 (2015年2月2日掲載 ) エントリー・採用選考に向けて意識したいこと①
第13回 (2015年1月26日掲載 ) 「雇用される」ということについて③
第12回 (2015年1月19日掲載 ) 「雇用される」ということについて②
第11回 (2014年1月13日掲載 ) 「雇用される」ということについて①
第10回 (2015年1月5日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑩
第9回 (2014年12月29日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑨
第8回 (2014年12月22日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑧
第7回 (2014年12月15日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑦
第6回 (2014年12月8日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑥
第5回 (2014年12月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え⑤
第4回 (2014年11月24日掲載 ) 就職活動に対する心構え④
第3回 (2014年11月17日掲載 ) 就職活動に対する心構え③
第2回 (2014年11月10日掲載 ) 就職活動に対する心構え②
第1回 (2014年11月1日掲載 ) 就職活動に対する心構え①

 

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