
【第23回】
採用選考の面接に向けて意識したいこと④~
面接で「よく言われること」とそれに対する考え方(後半)
今回は前回に引き続き、「不安」や「悩み」として持つ人が多いと思われる、面接における2つのポイントについて取り上げていくことにしたい。
◎厳しい「ツッコミ」や圧迫質問を受けてしまったらどうしよう…
「面接の途中で厳しいことを言われたり、圧迫質問をされるということは『見込みがある』と思われているから、そのような状況になったらむしろ期待をしてもよい」…ということがよく言われるが、基本的にはその通りに考えてもらって良いのではないかと思う。
仕事を進めていく上では、議論や交渉などをする場面も出てくることもよくあるが、そのような「議論」や「交渉」というのは、言うなれば、自分と相手の「利害」や「主張」のぶつかり合いの(そして、その上で、お互いに納得できる着地点を見出していく)場面である。それだけに、時には相手から厳しいことを言われたり、強いプレッシャーをかけられる…などといったことも出てくるのである。
もし、皆さんが、就職した「会社の一員」としてそのような場面に遭遇した時、相手の勢いやプレッシャーに簡単に押し切られて、自分たちにとって不利な条件を容易く受け入れてしまう、あるいは、すぐに感情的になって、相手に失礼な言動をしてしまって、その会社そのものに対する評判を落としてしまう…などといったように、社員の言動や立ち回りによって、その会社に不利益をもたらすようであっては、会社としても非常にまずいのは言うまでもない。
だからこそ、面接の時間の中で「『敢えて』そのような厳しい場面を再現して」その応募者がどのような言動や立ち回りをするのかを見てみることで、会社として望むような適切な応対が出来そうか(適切な…とまではいかないにしても、少なくとも明らかに不適切な応対をしてしまうことはないか)を確認しているのである。
つまり「『面接という限られた時間の中でで再現可能な』最も厳しい展開・場面」をつくって、そのような場面での「コミュニケーション力」を確認するということは、ある意味、それが「会社の一員」として迎え入れる(つまり、その人を採用する)にあたっての『最後の確認事項』だと言っても、おそらく言い過ぎでは無いだろう。
そして、それを踏まえて考えた時に、もうひとつはっきり言えることは「明らかに採用する見込みのない人」に対して、おそらく、そのような厳しいことはしない…ということである。(ただし、最近では「面接では厳しい質問の仕方はしない」という方針をとっている会社も数多くあるので、必ずしもそうだとは言えない…ということはお断りしておく)
なぜだろうか?…もし、その応募者に対して「不採用」という結果を通知すれば、その人は、今後「その会社の一員」として、その会社(あるいはその会社の商品やサービス)に関わる可能性はほとんど無いのだろうが、その会社の「お客さん(消費者・利用者)」あるいは「取引先の一員」として関わる可能性は十分にある…そのような人たちが、厳しい突っ込みや圧迫質問をされた上に、採用選考の結果が「不採用」という、応募している立場としては望んでいないものだったとしたら、その後、その会社に対してどういう感情や印象を持つだろうか?…おそらく、その会社に応募する前に持っていた(良い)印象を変わらず持ち続けられる人は、そんなに多くないのではないだろうか?
…ということは、採用する側から考えれば、明らかに採用の可能性が無い人に対して、無意味に厳しい質問やツッコミを浴びせて、その結果、自分たちの会社に対して強い嫌悪感や悪いイメージを持たれるよりも、その場は『穏やかにやり過ごしておく』ことで、その応募者から「採用選考が不採用だったことについてはショックだったけど、面接してくれた人も優しそうな感じだったし、会社としてはやっぱりいい感じの会社だったよね…」と思ってもらえた方が良いだろう…ということになるのである。
そのような点から考えても、やはり、面接で厳しい状況だと感じたら『むしろ脈アリ』だと、前向きに捉えても良いのではないかと思われる。ただし、おそらくかなり少数だとは思われるが、その会社の会社風土・雰囲気そのものが「厳しい」「荒々しい」といった場合もあるだろうし、(ただし「そのような雰囲気の方が自分に合う」という人もいるので、それに対して一概に「良し悪し」が言えるわけではない)また、面接官も「人」である以上、面接官自身の気質やその時の感情(例えば他のことで腹立たしいことがあって、その感情を引きずったまま面接をする)などで、本当に「多少の悪意」を持ってそのような振る舞いをしているような場合も全く無いとは言い切れない…ということも、念のため、頭の片隅には意識をしておいていただきたい。
結局、そのような「厳しいやり取り」をどのように解釈・判断するのかについては「その人自身の感じ方」によるところも大きいので、一つ一つの場面について、それをどう捉えるべきなのかについては、一概に云々と言えることではない。もし、全く同じ状況や場面に遭遇したとしても、その状況や場面をどう捉えるのかは、自分と他人ではかなり違ってくるだろうし、その違いがあるから、人には「個性」があるとも言える。これは面接に限らず、例えば、何かの物事を行うにあたっても、周りの人が「それをやりきるのはとっても大変なことだよ」と言っていたとしても、実自分自身がやってみたら「周りの人が言うほど大変ではなかった…」という話はいくらでもある。これも、自分の個性(強みや得意なこと)と他人の個性は違うからこそであろう。
それだけに、この項目の最後に一つ強調しておきたいのは、特に、いわゆる「口コミ系の情報サイト」に出ているような情報というのは、あまり鵜呑みにはせず、あくまで「『(自分と違う)その人』はそのように感じた」…という程度に受け止めるべきだということである。繰り返しになるが、他人の感覚はあくまでその「他人の感覚」であって「あなたの感覚」とは違うのだから、その他人の認識が、あなたに全く当てはまるわけではないのである。つまり、結局のところ「自分自身が実際に」面接を受けていく中で、「自分なりの捉え方」で、感じ・考えて、解釈・判断していくのが最も間違いがないのである。それだけに、より望ましい判断ができるようになるための「自己理解」や「応募先の企業に対する理解」が必要になってくるのである。
◎いつも最後に「何か質問はありませんか?」と言われるが、正直、そんなに質問も出てこない…
「質問することが無い」…というのは、ずばり「その会社に対する研究がまだまだ不十分」だということである。あるいは、「採用選考でする質問というのは『●●のようなもの』でなければならない」といった思い込みが強すぎるのかもしれない。
面接というのは、採用する側・応募者側のお互いが「その会社で活躍していくイメージが持てるのかどうかを確認する場」である。しかし、応募者の側からすれば「自分がその会社や組織で働く姿」をイメージしようとしても、その会社で実際に働いた経験が無い(あるいは、インターンシップのような短期間での経験しかない)から「思うようにイメージできない部分」が出てくるのは、ある意味で当然のことなのである。そして、その「思うようにイメージできない部分」について「実際に働いている人(面接官)に聴いてみることで、より明確なイメージを持てる」ようにするために質問をする機会がある…と考えるべきなのである。
もちろん、採用する側としても「この会社で働いた経験が無いのだから、分からない部分がいろいろとあるのが当たり前」ぐらいに思っている。だからこそ「思うようにイメージが出来ない部分」を、面接の機会にしっかりと確認してもらって、当社についてより正しい理解をしてほしい…と思うのである。
つまり、採用する側は次のような前提で、応募者に対して「本当にウチの会社で働きたいと思っているのであれば、当然、何か質問が出てくるはず」と考えているのである。
①応募者に、その会社の一員として働きたいという『熱意』『情熱』があれば、当然、会社のことについてしっかりと調べるはずである。
②しかし、広報的に発信している情報だけでは理解できることは限られているから、当然「もっと知りたいこと」や「確認したいこと」が出てくるはずである。
③それを理解・確認することが出来る『最大のチャンス』が、面接で質問ができる場面である…
…ということは「ウチの会社について、せっかく『社員の生の話』から知ることができる機会」に「『確認したいことや深く知りたいことが全く無い』ということは、この応募者は本気で『ウチの会社で働きたい』とは考えていないんだろうな(少なくとも、積極的に質問が出てくる人に比べれば熱意は弱いな)…」と判断されてしまう可能性が高いということなのである。
いかがだろうか。ここまでいくつかのポイントを挙げてきたが、結局、そのすべてが、いわゆる「小手先のテクニック」で何とかなるものではなく、皆さん自身がどのように意識を持ち、どのように行動していくのかが重要だと言えるだろう。そして、それは周りの人が何とかしてくれるようなことではなく、自分自身の「意識」と「行動」でしか解決できないようなことなのである。それを理解ていただいた上で「前向きな」意識で面接に向き合っていただきたいと思う。
※このコーナーで取り扱う内容は、あくまで一般的な事項として取り上げるものであり、企業・団体などにおける個別の採用選考において、具体的な効果・成果などを保証するものではありません。
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